セクシュアルマイノリティはどんなことで困ってる?性別変更編

性同一性障害と戸籍[増補改訂版] (プロブレムQ&A)

性別変更のための条件とは?

性別違和のある人はジェンダークリニックなどでカウンセリングやヒヤリングを受けながら2人の医者に診断書を書いてもらうことで性同一性障害と診断されます。その後5つの条件を満たすと戸籍の性別が変更できます。戸籍の性別を変更するための条件とは次のようなものになります。

  1. 二十歳以上であること。
  2. 現に婚姻をしていないこと。
  3. 現に未成年の子がいないこと。
  4. 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
  5. その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

これら5つの条件が必要です。戸籍の性別が変更できるようになったことはとても画期的な事でした。けれども、実際性同一性障害者が、戸籍の性別を変更しようとすると様々な壁が見えてきました。

それぞれの条件の壁その1

「二十歳以上であること」の条件ではその名の通り、未成年は性別変更できません。例えば、日本では18歳という高校卒業の年齢が進学、就職のひとつのくぎりの年齢となっています。進学、就職など新しい生活を気に性別を変更してスムーズに入学手続きや就職の新生活を始めようとしたときに、未成年であることを理由に性別変更ができない状況にあります。

性別を変更できない場合、カミングアウトが必要となり、強制的に学校・企業に性同一性障害だと知らせなくてはならなくなります。

当たり前ですが、中学卒業後自立する人もいるでしょうし、「成人」の是非は議論・調査が必要なのかもしれません。

次に「現に婚姻をしていないこと」、つまり結婚していないことを条件にしたものです。

これは日本では同性婚が認められていないため、性別変更後同性婚にならない状態に合わせるためです。

ただ、結婚してから自分が性同一性障害と気付いた人、現に結婚している性同一性障害者も少なくありません。そういった人たちは愛し合っていたとしても、長年生活を共にして信頼し合っていたとしても、性別を変更するのであれば、離婚する必要があるのです。

また、性同一性障害者で同性愛の人もいます。例えば「男性に生まれ女性に性別変更し、好きな対象は女性」という場合、この方は同性愛者として現在の日本では婚姻できないです。

「現に未成年の子がないこと」。実は子どもが成人である事と言う条件はこの法律が施行された当時は「子どもがいないこと」というものでした。しかしながら子どもがいる性同一性障害者は一生性別変更できないことに異議があがり、「現に未成年の子がいないこと」という条件に変更されるという経緯がありました。

しかし、子どもが未成年のうちに性別変更できないと、学校などで逆に簡潔に説明しづらい状態のままに放置されてしまう、という考え方もできます。当事者や当事者家族にとって何がベストなのか更なるたくさんの議論が必要なのかもしれません。

それぞれの条件の壁その2

「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」

精子などを作れないなど、子どもを作れない状態になるということです。

性別を移行して異性愛者となっても、自分の子どもを持つことができません。現時点ではFtMであれば、婚外子として精子提供を受けて設けた子どもについては戸籍上「父親」になることがやっと認められましたが、次の条件と合わせて「メスを使わせる方向に個人を突き動かすことは、法律に明記すべきではない」のではないかという反発もあるようです。

5つ目の条件「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること」は変更したい性に合わせた性器を手術によって取得しなければいけない、というものです。戸籍の性別は変更したいけれど、手術はしたくない、あるいは例えば胸だけは手術で得たいけれど、性器は手術したくない、と思っている人は、戸籍の性別を変更するために手術をするのは、それとも戸籍の性別を変更するのをあきらめるのか2択の選択を迫られることになります。

このように戸籍の性別は変更できるようになりましたが、様々な壁が待っており、実際戸籍の性別を変更できたのは一部の人たちでした。

お金がかかる!

性同一性障害の治療は例えば性別適合手術(心の性に身体の性を合わせるための手術)などは、基本的に保険が適用されません。

保険適用に道筋はつきつつありますが、依然として性別適合手術や、その治療には多額の費用がかかります。そのため、ホルモン剤や性別適合手術をタイなどの性別適合手術の先進国であり物価も安く済む海外で調達したり手術を行う人も少なくありません。

タイなど性別適合手術先進国で手術の技術も高く、手術代が日本に比べて安く済むなどのメリットはありますが、ホルモン剤を自分で調達するリスクや手術のとき言葉が通じないリスクなどデメリットも多くあります。

また安くて済むとはいえ、まとまった金額が必要です。また性同一性障害をとりあつかう専門医がまだまだ少ないため、県や地方を超えて病院へ通わなければならず、通院費(交通費含む)も大きな負担となってきます。

仕事に就きづらい性同一性障害や性別違和を抱える人たちにはなかなか難しく切実な問題です。

引用・参考

厚生労働省「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO111.html

鈴木雅之「性同一性障害 性別変更の「男性」が戸籍の父に 穴粟」神戸新聞NEXT、20131225、最終確認:20150825
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201508/0008320838.shtml

加藤秀一ほか著『図解雑学ジェンダー』ナツメ社,2005.