土工計画について(その3)擁壁の種類と最近の採用傾向

道路土工ー擁壁工指針 平成24年度版

擁壁がどんな物か皆さんもご存じだと思いますが、定義すれば「崖や盛土において土砂が崩れるのを防ぐために設置する壁状の構造物」という事になります。

急峻な地形の山岳部などで盛土法面では処理出来ない箇所や、平地部でも用地の関係で法面を出せない場合に、擁壁計画が必要となります。

擁壁の種類は大きく分けて、プレキャスト擁壁と場所打ち擁壁に区分できます。プレキャスト擁壁とは、工場であらかじめ製造された擁壁のことで、それを現場まで運搬してクレーン等を使って現場で組み立て設置します。場所打ち擁壁とは、その名の通り現場で実際にコンクリートを打設して造り上げていくものです。最近は施工性が良くて、品質的にも同じ物を造れますのでプレキャスト擁壁が主流です。

プレキャスト擁壁で一番使用される物に、L型擁壁という物があります。L字の形をした擁壁で、L字の中にある土の重量と擁壁自体の重さで、土圧に抵抗して安定させるものです。製品高さは60cmから高い物で5mまでありますが、通常は3m程度までの使用が多いです。高さが4mや5m物となると、運搬するのに広い道路が必要ですので、道路条件によっては別な形式の擁壁を採用することがあります。

場所打ち擁壁で最もポピュラーな物は、重力式擁壁という物で、擁壁自体(コンクリート)の重さだけで土圧に抵抗して安定させる物です。高さ的には3mくらいまでの使用が一般的です。構造上は4mや5mでも可能ですが、形状が大きくなり過ぎて不経済ですし、重くなるので支持地盤が良好でないと安定しません。1m程度の高さまでなら、現場条件によりますが、L型擁壁より重力式擁壁を採用することも多いですね。

場所打ち擁壁の仲間で、逆T式擁壁というのがあります。T字を逆さまにした形の擁壁で、プレキャストL型擁壁と同様に逆T 字上の土の重さと擁壁自体の重さで土圧に抵抗します。逆T式擁壁の場合は重力式擁壁と違い、部材が薄いので鉄筋コンクリート造りとなります。
鉄筋の組み立てに時間が掛かるなど、施工性で劣りますので最近はあまり採用されません。

逆T式擁壁に代わる物として、補強土壁工という物があります。橋梁部の取り付け部分とか、市街地で盛土が高い箇所や山岳道路などで幅広く採用されています。補強土壁工というのは、壁面は垂直かそれに近いもので、盛土内に配置した帯状の補強材(端部は壁面に固定)の引抜き抵抗力によって土圧との釣り合いを保ち、補強材と土の部分が一体となって安定を図る構造になっています。簡単に言えば盛土の土の部分を帯状の補強材で補強して安定させるイメージです。

最近は色んな種類の補強土壁工が開発されていますので、使用する際は施工場所ごとに比較検討を行います。補強土壁工法は剛性では逆T式擁壁に劣りますし、土の種類や性質に左右される物も有りますが、壁面の緑化が可能だったり施工性では優れていますので、プレキャストL型擁壁や重力式擁壁では対応できない高さや条件の場合はよく採用されています。