土圧と擁壁の安定(その1) 土圧とは、そして擁壁の安定条件とは
擁壁計画の中で「土圧」という言葉を使いましたが、土圧とは何だか分かりますか?水の場合は水圧というものがあり、プールや海の中に潜ると圧力を感じますので分かりますよね。土の場合でも同じで、土の中の構造物には土圧が作用します。土の中にある物には上下左右から土圧がかかり安定していますが、擁壁のような構造では横からの土圧のみを受けるので、その土圧により擁壁は倒され動かされたりします。擁壁の安定を保つためには、土圧に対して抵抗出来る構造にする必要があり、計画を行う際には安定計算を実施して照査します。照査する方法は、擁壁が次の3点について満足しているかどうかを確認して行います。
- 転倒に対する安定
- 滑動に対する安定
- 基礎地盤の支持力に対する安定
転倒に対する安定とは、転倒させようとする土圧や擁壁の自重を含めた合力の作用位置が、擁壁底板の中心付近にあるかどうかを照査します。合力が中心付近にあれば転倒しないと判断し、底板の踵側(後ろ側)の位置に合力があれば転倒の危険があると判断します。人間が立っている状態で押された場合に、重心が足裏の中心にあれば倒れませんが、重心が踵側にくれば倒れてしまいますよね。それと同じことです。
滑動に対する安定とは、土圧により押された場合に、擁壁自体が横方向に動いてしまうかどうかを照査します。押す力に抵抗するのは擁壁の自重と、擁壁底板と基礎地盤の間の摩擦力なので擁壁を重たくすれば良いわけですが、重すぎると不経済なので、安全率として1.5の値が確保出来る擁壁形状を目指します。安全率1.0の場合が、動かそうとする力と抵抗力が釣り合っている状態で、安全率が1.0を下回れば安定しないという事になります。
基礎地盤の支持力に対する安定とは、擁壁底板に作用する合力の分布が基礎地盤の許容支持力を超えないようにする事です。いくら転倒や滑動に対して安定しても、基礎地盤が支持出来なければ擁壁は安定しません。