土圧と擁壁の安定(その2) 地震時における擁壁計画

2016年7月5日

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日本は地震が多い所ですから、当然土木の世界でも地震の影響は考慮します。擁壁計画の場合は、壁高が低いL型擁壁や重力式擁壁では地震時の計算を省略出来ますが、壁高が高い逆T式擁壁や補強土壁の場合は地震時の安定計算を行うのが一般的です。安定計算を行う際の地震時の外力としては、地震時土圧、擁壁に作用する地震時慣性力を考慮して検討します。

地震時土圧や地震時慣性力を求める時は、設計水平震度を用いて算出しますが、その設計水平震度は地盤種別毎に決められている設計水平震度の標準値に、地域別の補正係数を乗じて決定します。地盤種別はⅠ種地盤~Ⅲ種地盤に区分されていて、沖積層と洪積層の分布状況により判断されます。

  • 沖積層:地質学的に最も新しい地層であり、未固結で強度的に非常に軟弱な地盤
  • 積層:沖積層より古い時代に形成された地層で、固結までには至っていないが一般的に良好な地盤。

沖積層は支持地盤としては不適であり、沖積層が厚いと設計水平震度も大きくなります。

地域別補正係数は日本全体をA地域~C地域に区分して決められており、東北の太平洋側や関東及び東海地方などが大きい値となっていて、日本海側や中国四国地方が中間の値で、北部九州や西九州及び北海道の一部などが小さい値となっています。

設計水平震度を決定し、地震時土圧や地震時慣性力が求まれば、常時の時と同じように、転倒に対する安定、活動に対する安定、基礎地盤に対する安定に対して照査を行います。地震時の場合は常時と違って、一時的な状況下なので、安全率の面で常時より低い値となっています。例えば、転倒に対する安定の場合、合力の作用位置は若干後ろ側(踵側)に寄っても良い事になっており、活動に対する安全率も常時の1.5に対して地震時は1.2となっています。基礎地盤の支持力に対しても同様な考えです。

道路構造物として擁壁計画を行う場合は、日本道路協会から発行されている「道路土工 擁壁工指針」に準じて検討を行うのが原則となっていて、上記で紹介した事はその擁壁工指針で解説されています。