スクールセクシュアルハラスメントとは 学校とジェンダー スクールセクシュアルハラスメント編(1)

知っていますか?スクール・セクシュアル・ハラスメント一問一答

Scene「勘違いかもしれないし、おおごとにしたくない。でも信じてもらいたい」

小学校も4年目に入り楽しい日々を過ごしていた陽菜ちゃんは困っていました。陽菜の友人である凛ちゃんからの相談がずっと引っかかっているのです。昨年度の担任の男性教諭から髪や背中を何度も繰り返し触れたり顔を接触するほど近づけられるというのです。何度も自家用車で送っていくと、放課後クラブの後下校中に誘われたり、ケータイを持っていないと言うと、凛のことが心配でラインをしたいから、ケータイを持つように言われたりしたといいます。

その男性教諭は真面目で、冗談も言いません。陽菜ちゃんは最初その話を聞いた時にその男性教諭がそういったことをするとは信じられませんでした。凛ちゃんも先生には真面目でこんなことはしないイメージがあること、先生を信じたいという気持ちがあること、誰にも信じてもらえないんじゃないかと思って長期間相談できなかったこと、誰かに打ち明けて先生を怒らせたら担当の授業や毎日の生活で顔をあわせることから言いにくかったこと、被害を受けたことが恥ずかしくて言えなかったことなどを打ち明けてくれました。

「そうだったんだね。つらかったんだね」

陽菜ちゃんがそう言うと、凛ちゃんは涙を流してありがとうと言いました。

「最近それが気になって、授業も見に入らないし、あの先生は今年は担任じゃないけれど今でも授業で会うし、

困ってたんだ。聞いてくれてありがとう。」

凛ちゃんはそういいました。

数日後、凛ちゃんは学校に相談することを決心しました。

担任の先生に、放課後話を聞いてもらうことにしたのです。今年度の担任教諭と話すために教室に行った凛ちゃんを陽菜ちゃんが自分のクラスで待っていると、凛ちゃんが泣きながらやってきました。

「どうしたの?凛ちゃんのクラスの担任に話を聞いてもらったんでしょう?どうだったの?」

陽菜ちゃんが問うと凛ちゃんはゆっくりながら先ほどの出来事を説明してくれました。

「実は、担任の先生に相談してみたんだけど……私の思い込みじゃないかって言われて。あの先生は立派な先生だし、こういうデリケートな問題はもしかしたら先生の仕事を奪うかもしれないんだよ、はっきりしてから言いなさいって言われちゃったの。確かに触られたのは髪だけだし、問題になるような行動とは違うのかもしれない」

と凛ちゃんは言いました。

翌日、凛ちゃんの様子が気になった陽菜ちゃんは、凛ちゃんのクラスを訪ねました。すると、凛ちゃんの姿がありません。保健室に行ったとクラスメイトから聞いたので、昼休みに訪ねてみました。

担任の先生にああいう風に言われたものの、今日もいつものように昨年度の担任の教諭が近づいてきそうになり、苦しくなって保健室に来た、と話してくれました。

保健室の先生に相談してみると新聞に載っていたスクールセクシュアルハラスメントの問題を扱っている団体に凛ちゃんや学校が特定されないように、こういった問題もセクシャルハラスメントやスクールセクシュアルハラスメントにあたるのか、またどう対処すればいいのかなど問い合わせをしてくれるようになりました。

※Sceneシリーズはフィクションです。

 スクールセクシュアルハラスメントとは

スクールセクシュアルハラスメントとは学校で起こるセクシュアルハラスメントのことです。スクールセクハラとも言われます。スクールセクシュアルハラスメントの頭文字を取って、SSHと略されることもあります。スクールセクシュアルハラスメントはセクシュアルハラスメント、つまりセクハラとは職場を想定して作られました。「セクシュアルハラスメント」が新語・流行語大賞の新語部門に選ばれたのは1989年です。今では男性から女性へという被害だけでなく、女性から男性へのハラスメントも禁止されています。また女性から女性へ、男性から男性へという同性間のハラスメントも行ってはいけないことになっています。

スクールセクシュアルハラスメントは、学校で起きるセクシュアルハラスメントのことですが、とりわけ、大学で起こるセクシュアルハラスメントはキャンパスセクシュアルハラスメント、アカデミックハラスメントとも呼ばれています。またアカデミックハラスメントはセクシュアルハラスメントのことだけでなく、評価を行う指導者から、指導を適切に行ってもらえないことや人格を否定される言葉を投げかけられることなどハラスメント全体も含みます。

スクールセクシュアルハラスメントはセクシュアルハラスメント、セクハラの誕生と同じくして生まれた概念、つまり1990年代初めに登場したという意見もありますが(※1)、ここ数年でやっと広まりつつある言葉だと言えると思います。それ以上にまだまだ認知が進んでいないのが現状ではないでしょうか。

教師は生徒とどんなに仲が良くても評価をし、成績を付けるという権限を持っています。

スクールセクシュアルハラスメントは、とりわけ教師と児童生徒の間の問題をとりあげるとすれば、「教師と児童・生徒という力関係を利用した子どもに対する性虐待の一形態であるともいえるのです。そして、この問題はただの性癖ではなく、子どもへの人権意識の欠如と、性差別意識(ジェンダー)が社会的背景にあるようです。人権侵害と言う点と、権力関係が背景とした起こる点で、体罰の問題と根底は共通していると指摘する人もいます(※1)。

※1
池谷孝司『スクール・セクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』幻冬舎2014