スクールセクシュアルハラスメントの現状 学校とジェンダー スクールセクシュアルハラスメント編(2)

スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか

被害としてはメールやSNSを利用して私的なメッセージを送るもの性的嫌がらせや、体を触るなどの行為、強姦や胸を触るなど刑罰に当たるものまであります。

文部科学省の調査では2013年度に全国の公立小中高校や特別支援学校で、強制わいせつや盗撮などで懲戒処分・訓告を受けた教職員は過去最多の205人(うち免職は117人、私立や国立の学校は含めていません)。

文科省が、現在と同じ方法で集計を始めた1988年度は17人でした。2001年に兵庫県の公立中学校の男性教諭が、大阪市の中学1年の女子生徒に手錠をかけて連れ回し、死亡させた事件を機に、「原則として懲戒免職」という厳罰化に転じるようになったようです。

わいせつ行為の相手は、「自校の生徒」が77人(38%)で最多。「自校の児童」(16人)などを含めると、「教え子」は約半数。内容は「体に触る」が56人で最も多かった。電子メールなどによる性的嫌がらせも増えています。

文科省がまとめた2012年度における教師のわいせつ行為が発覚したきっかけは、「教職員への相談」38.2%、「警察からの連絡等」29.0%、「現場を目撃」7.5%、「本人または保護者からの教育委員会への通報」5.9%%、「学校や教育委員会への通報」4.8%、「加害者からの申し出」4.3%となっています。つまり、被害者が相談したり警察からの連絡がなければ多くが明るみに出ないこともあるのです。

 

さまざまな立場の加害者と被害者、様々な場面の被害

学校でのセクシュアルハラスメントは教師だけが加害者とは限りません。

神奈川県が平成26年度に県立学校生徒を対象に行ったセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)に関する調査では、セクハラ行為者は「生徒」(51件)と「先生」(19件)で全体(93件)の4分の3を占めています。「部活動の指導者」も3件でした。

このように学校で発生するセクシュアルハラスメントの加害者は教師、生徒、部活動の指導者(校外指導者)などの場合があります。更に、学校を借りているという点でスクールセクシュアルハラスメントと含めれば、少年野球などの指導者も加害者になりえます(詳しくは「〇男の子は被害に遭わない?」でも記述しています。)また、被害者は生徒、教育実習生、教師、(保護者)などがあります。教師は職場のセクシュアルハラスメントとなりますが、子どもを指導する環境にある教師は人権などにも配慮しなければなりませんし、教師の言動を生徒はよく見ています。セクシュアルハラスメントの行為や差別意識を持った言動などを生徒は「学ぶ」可能性があります(隠れたカリキュラム)。とりわけ気を付けなくてはいけないと言えます。

部活動では、体罰と併用されることもあったり、試合に勝つために正当化されたりする傾向があるようです。また限定的な空間ですので注意が必要です。

また修学旅行中、男性教諭が女子の部屋に侵入し、わいせつな行為を行った例もあります。

 

スクールセクシュアルハラスメントの長い影響

スクールセクシュアルハラスメントは被害が長引きやすく、また卒業後も被害に遭うこともあり、被害の長さも特徴の一つでしょう。

生徒を持続的に担当のクラスにしたり、進学時には「地元の大学へ行ってほしい、自分も近くの学校へ転任するから」と要望したり、近況を報告させるために、卒業してからも部活動の先輩として母校へ来させたりする例もあるようです。また、2015年公立中学校に勤務する50代の男性教諭が知的障害のある元教え子の少女にわいせつな行為をしたことで逮捕されるというニュースが報道されました。中学1年の時から被害を繰り返し受けており、卒業してからも携帯電話で呼び出されていたようです。(※注1

このようにスクールセクシュアルハラスメントは被害が見つかりにくいうえに、卒業後など長くにわたって被害が続くことが特徴です。

スクールセクシュアルハラスメントの場合、密室で行われることが多く、被害者も何がセクシュアルハラスメントなのか知らないこと、教師や指導者などがそういったことをするとは信じらせない気持ち、内申書や部活(例えば、レギュラーメンバーになれるか、試合に出られるか、練習時に指導してもらえるかどうか)に影響する権力を握っている相手に言うに言えないこと、被害を受けたことを恥ずかしくなってしまうこと、自分に責任があるのではと自分を責めてしまうことなどから、長年言えないことが多くあります。最近では、SNSやケータイの普及によってプライベートな交流が簡単にできてしまうために、スクールセクシュアルハラスメントについての認識をちゃんと持っていないと、被害が起きやすい環境になってきているのではないでしょうか。

また、被害が終わってからも被害者の心への影響は長期間にわたります。

九州の市立中学3年の女子生徒が所属する剣道部を指導している校長から、校長室や社内でわいせつ行為を受けた例があります。生徒は進学先を県立高校から県外の市立に変更しましたが、入学後ストレスで体調を崩し、その私立中学を中退せざるを得なくなりました。

高校の時に被害に遭ったある当時の女子生徒は、抗議すると「俺に見放されたら、お前は終わるぞ」と脅されました。彼女は学校に行けなくなりました。眠れなくなり、食欲もなく下痢を繰り返し、嘔吐(おうと)が止まらないこともありました。心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されました。

四国のある県では、県立高校の教員からわいせつ行為を繰り返し受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された女性が22歳の若さで飛び降り自殺をしました。

池谷孝司『スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』では、被害を誰にも言えなかった50代や60代の女性が紹介されていました。その歳になっても被害を言えなかったり、被害で受けた心の傷をいやせずにいる人がいます。

被害が終わってからも被害者の心への影響が長期間でることから、スクールセクシュアルハラスメントの長い影響は問題でしょう。

被害が表面化するまでにも時間を要します。それに加え、表面化しても被害者は途方もない長い戦いを強いられます。

 

※注1 ただし、逮捕されただけではその人が有罪かどうかは決められません。疑わしきは罰せずという法の原則によって有罪が確定するまでは、無罪であるとの原則があるからです。

またこのような理由から、刑事事件と民事訴訟の結果が異なる場合もあります。