被害にあわないために、事件を起こさせないために 学校とジェンダー スクールセクシュアルハラスメント編(5)
スクールセクシュアルハラスメントは性的虐待でありわいせつ行為は人権の侵害という認識を周りの人と確認し合いましょう。
神奈川県は06年度から、県立学校の生徒を対象に、3年おきにセクハラアンケートを実施し、被害の把握に努めてきました。13年度からは毎年に変更されています。アンケートの配布によって抑止効果にもつながった面もあるようです。
むやみに連絡先を交換しないようにしましょう。全国の15県教委が私的なメールを禁止しています。
18歳未満の子どもとの性的な関係を持つのは大半の都道府県条例で禁じられており、13歳未満なら子どもの意思にかかわらず刑法の強姦の罪に当たります。また強姦致傷罪の時効は2004年までは10年、現在は15年になっています。民事訴訟で学校の責任を問える時効は10年。起算点を事件発覚ではなく卒業した時とする判決が2002年に金沢地裁で出ています。
必要以上に触れていないかなど指導の見直しをしてみてはいかがでしょう。文部科学省が2013年に出した「運動部活動での指導のガイドライン」が許されない例として体罰やセクハラを挙げた上で「上記には該当しなくとも、社会通念等から、指導に当たって身体的接触を行う場合、必要上、適切さに留意することが必要」としています。
何がスクールセクシュアルハラスメントか、大人も子どもも普段から学習の機会を持ちましょう。Scene3の凛ちゃんのように何がスクールセクシュアルハラスメントかわからない、という状況ではなく、子どもも大人も何がスクールセクシュアルハラスメントかを確認しておきましょう。また小さいうちからスクールセクシュアルハラスメントに限らずわいせつ被害の防止のためにも「水着で隠れるところは人に見せたり触らせたりしてはダメ」「あなたの身体はあなたのもの。触られたくないときはそういっていい」と教えていくことも必要でしょう。具体的な声掛けの場面を描き、注意喚起しているカナダ発の絵本「とにかくさけんでにげるんだ」(岩崎書店)などを日頃から読ませていくことも効果的かもしれないですね。
これらに加えて書籍を置いてみたり、スクールセクシュアルハラスメントの防止のためのワークショップを紹介している本もありますのでそれらを共有してもいいかもしれません。
スクールセクシュアルハラスメントを取り扱っている書籍やパンフレット
- 亀谷明子『知っていますか?スクール・セクシュアル・ハラスメント一問一答』解放出版社2004
- 池谷孝司『スクール・セクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』幻冬舎2014
- 子ども性虐待防止市民ネットワーク・大阪編『白書スクール・セクシュアル・ハラスメント』明石書店 2001
- 川崎市教育委員会『ストップ・ザ・セクハラ』
- (小学生用、中・高校生用パンフレット、教師用指導の手引きがある)
これらのほかに各地自治体で使用しているPDFデータなどがインターネットで見ることができます。
※すべての中身を確認できているわけではありません。
被害にあったら、身近にスクールセクハラが起きたら
嫌なことは嫌だと思っていいです。あなたの身体はあなたのものです。むやみに触られるのを嫌だと言ってもいいんです。
いつどんなことが起きたかメモを取る、録音する、メールを保存するなど記録することが役立ちます。
信頼できる人に相談しましょう。まず校長先生への相談をサポート団体の代表は進めています。信頼できない場合は先に教育委員会に相談しましょう。ただし、校長先生や教育委員会は捜査の専門家ではないためうやむやにされることもあります。いじめや体罰の真相究明のために各地で設置されている第三者委員会などの第三者機関や、サポート団体などに相談することもオススメします。
最近は被害者が匿名でも事実が明確になれば処分に繋がるケースが出ています。
また私立でも都道府県に苦情を言えたり、法務局や弁護士会に人権救済の申し立てをしたりもできます。
相談された方は、被害者の話を、責めたり否定したりせずよく聞いてあげてください。過剰に反応せず、「大したことない」と過小でもなく、冷静に聴いて共感してあげてください。各機関聞き取りをすることがあるかもしれないですが、できれば聞き取りは1回にしてあげましょう。これは虐待や性被害、わいせつ被害にあった子どもたちに共通する考えで、被害の聞き取りのルールが広まってきているようです。
対処を考える場合には、どのような対処をすれば納得できるのかは被害者によって違います。
一度スクールセクシュアルハラスメントが起きると学校全体が落ち着かない雰囲気になる可能性があります。学外では子どもも性の対象として見られ、痴漢やわいせつ事件、制服姿の盗撮などがあるようです。学校の中では安心して生活できるようにしてあげたいですね。
インターネットなどで確認できるサポートグループ
・キャンパス・セクシュアル・ハラスメント・全国ネットワーク
・SSHP全国ネットワーク
・NPO法人「子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク」
・サチッコ(SACHI子どもセンター)
http://www.sachicco-osaka.com/
など
※下の2団体はスクールセクシュアルハラスメントではなく、性被害やわいせつ被害のサポートグループです
おわりに
今回筆者がスクールセクシュアルハラスメントを取り上げようと思ったのは、中高生向けのEテレの番組でこの特集が組まれていたからです。番組を直接は拝見できなかったのですが、番組WEBページでは様々な体験談などを見ることができました。このように取り上げられたのは、今の子どもたちにとって、このスクールセクシュアルハラスメントが身近な問題であるということであり、筆者は驚きを隠せませんでした。また、このテーマを書こうとニュースを集めている時に頻繁に様々な事件が報道されることにも驚きました。(発覚や報道だけで「行為があった」と断定するのはメディアリテラシーにおいては甘いと言われるかもしれませんが)
女子小中学生人気の雑誌「二コラ」(新潮社)にスクールセクハラについての記事が載った際には、子どもたちから多くの相談電話が紹介されたサポート団体にかかってきたようです。
筆者が教育を専門に学ばなかったためか、スクールセクシュアルハラスメントについてはしっかりと学びませんでした。「性」というとても繊細なテーマでもありますし、あってはならないことですので、とりあげないのかもしれません。
しかし、性犯罪全般に言えることですが、加害者は見知らぬ通りすがりよりも知人や顔見知りが多いです。ということを考えれば、学校内で性被害を伴う行為や犯罪が起こることも可能性がゼロではないと言えるでしょう。
こういったことや、今まで述べてきたように被害があるのは確実ですし、被害がない場合でも予防の観点から、持続的に取り上げていくことが必要ではないでしょうか。
被害に遭った子どもは長らく被害に苦しみ、問題が解決したとしても長年その被害を抱えていくと思われます。何か起こってから対応を考えるのではなく、被害をださないようにしていくことが大切でしょう。
参考・引用
井上 輝子、江原 由美子編『女性のデータブック―性・からだから政治参加まで』、東京:有斐閣、2005.
花井武人「不適切な発言:小6担任教諭が 愛知・尾張旭市教委」毎日新聞、最終確認:20151125
http://mainichi.jp/edu/news/20151125ddq041100011000c.html
共同通信「わいせつの県立高教諭停職、香川 元生徒の女性自殺」京都新聞、最終確認:20151119
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20151118000138
杉原里美「「先生触らないでください」 教え子らへのセクハラ深刻」朝日新聞、最終確認:20151026
http://digital.asahi.com/articles/ASH6Y4RWPH6YUTIL010.html?rm=916
竹下由佳「教え子へメール、だめ? 15県教委が禁止、送り続けて処分も セクハラへ発展警戒」朝日新聞、確認:20151211 http://digital.asahi.com/articles/DA3S11670012.html?rm=150
加藤沙波「わいせつ:知的障害教え子に 容疑の教諭逮捕 卒業後も呼び出し 愛知」毎日新聞東京夕刊
最終確認:20151130 http://mainichi.jp/shimen/news/20151130dde041040045000c.html
著者名なし「スクールセクハラ被害深刻 県立校生のべ61人、「泣き寝入り」17件」 産経新聞神奈川県、
最終確認:20151026 http://www.sankei.com/region/news/150801/rgn1508010024-n1.html
NHKONLINE「別の児童の裸も撮影か 小学校教諭を再逮捕」、最終確認:20151211
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151209/k10010334831000.html
著者名なし「選手を裸で走らせスマホ撮影 少年野球監督が辞任 徳島」、朝日新聞、最終確認:20151207
http://www.asahi.com/articles/ASHD6525GHD6PUTB005.html
鈴木敦子田中佳子「わいせつ被害NO!:/上 危機感持ち対処法確認」毎日新聞 最終確認:20151025
http://mainichi.jp/shimen/news/20150622ddm013100002000c.html
鈴木敦子「わいせつ被害NO!:/下 家族で抱え込まず届け出を」毎日新聞、最終確認:20151025
http://mainichi.jp/shimen/news/20150629ddm013100030000c.html