ヨーロッパと北大西洋海流
ヨーロッパは、緯度が高いわりには比較的温暖です。例えば、フランスの首都パリは、北海道北部の稚内市よりも北側に位置していますが、気候は比較的穏やかです。さらに北に位置するイギリスの首都ロンドンでも、流氷が大量に押し寄せているなどのイメージはありません。では、なぜヨーロッパの気候は比較的温暖なのでしょうか。
その理由は、沖合を流れている海流にあります。ヨーロッパの沖合には、北大西洋海流が流れています。この海流は、南西から北東に向かって流れる暖流です。したがって、南から暖かい水を運んできます。その結果、ヨーロッパ北西部の地域では、緯度の割には温暖な気候がみられるのです。
とはいえ、沖合を暖流が単に流れているだけでは、気候にこれほど大きな影響を与えることはありません。北大西洋海流に加えて、西から東に向かって吹く偏西風があることで、北大西洋海流がヨーロッパの気候に影響を与えます。
偏西風といえば、日本にも吹いており、飛行機で西から東に向かうときには追い風となり、東から西に向かうときには向かい風となることから、東に向かって飛ぶ便のほうが、所要時間が短くなります。このように、世界の様々な地域で吹いているのが偏西風です。
ヨーロッパでは、この偏西風が、北大西洋海流上の暖かい空気を大陸にもたらします。そのため、暖流の暖かさが大陸の気温の高さにつながるのです。北海道よりも北に位置する地域で、冬場に雪ではなく雨が降ることがあるのも、海流と風が影響しています。
このように、ヨーロッパは緯度の割には温暖な気候となっているため、日本の東京や大阪などと同緯度帯にあるというイメージを持っている人が多くいます。しかし、実際にはヨーロッパの多くの地域は北海道と同じか、より北側に位置していることを知っておきましょう。もし北大西洋海流や偏西風がなければ、ヨーロッパは冬の寒さが非常に厳しく、暮らしにくい地域となっていたはずです。海流や風の貢献もあってこそ、パリやロンドンといった都市が発展できたのです。