三角州のでき方と種類

地層は語る―北部九州の事例から― | 岸川 昇, 佐賀県高等学校教育研究会理科部会地学部会 | 本 | Amazon.co.jp

三角州とは、河川の河口部において、土砂が三角形に堆積する地形です。河川の流れは、土砂などを運搬する力を持っています。この力は、河川が海に流れ出るときに弱まります。その結果、河口付近までは運搬されていた土砂の一部が堆積し、三角州を形成します。土砂の中でも、粒の大きなものは河口付近に至るまでに堆積してしまうことが多く、三角州を形成するのは、細かな粒子の土砂が中心です。以下では、三角州の種類をいくつか取り上げます。

三角州の種類は、運搬されてくる土砂の量や、河口付近の潮流の強さによって決まります。大きく分けて、3種類の三角州があります。

まず、潮流が最も弱い場合には、円弧状三角州が形成されます。名前からわかるように、河口付近を中心とした円弧状の地形ができます。円弧状三角州が大きく広がるためには、潮流が弱いことに加えて、運搬されてくる土砂の量が多いことも求められます。代表例としては、エジプトのナイル川河口の三角州が挙げられます。

運搬される土砂の量が多くても、潮流が比較的強いと、鳥趾状三角州が形成されます。「趾」という漢字は、「あし」という意味を表しています。したがって、鳥趾状三角州は、鳥のあしのような形をしています。代表例としては、アメリカのミシシッピ川河口の三角州が挙げられます。

潮流が最も強いタイプの三角州は、尖状(カスプ状)三角州です。イタリアのテヴェレ川河口に見られるものが代表例です。潮流が強いため、河口に極めて近い部分にだけ土砂が堆積し、河口からやや離れたところには陸地は形成されません。その結果、河口部分だけが尖状に突き出た形の三角州が形成されます。

このように、三角州は、河川の運搬力や河口付近の潮流の強さによって形状が変わります。「三角州」という名前だからといって、必ずしもきれいな正三角形になっているわけではないのです。地形図を見る機会があれば、河口付近に三角州が形成されているかどうかや、どの種類の三角州ができているのかに注目してみましょう。