土木分野の実状と建築分野との違い
土木分野の実状
建設業に従事している人の数は全体的に減少傾向にあり、とりわけ土木分野は人材不足と高齢化が深刻な状況となっています。高校や大学に進学する際に、土木分野の道を選ぶ若者が減っているのでしょうね。
「土木」というイメージはいつまで経っても、スコップとつるはしを持って地面を掘っている印象が強いのでしょうか? 確かに機械で掘れない所は人の手で掘らないといけませんが、現場を指揮するような技術者になれば、そんな事はしません。また、現場に出ないで設計だけに従事している人も多くいます。
全国にいる土木技術者の中で、現場にも出て自分で設計もしている人は殆どいません。分業化が原則で、現場に出て物を造る人はゼネコンに努めている人たちで、設計だけを担当している人たちは建設コンサルタントとして働いている人たちです。
ゼネコンとは「総合建設業」のことで、会社の規模や技術力が特に高い「鹿島建設、大成建設、清水建設、大林組、竹中工務店」の5社のことを「スーパーゼネコン」と呼んでいます。大手5社には設計部門もありますが、基本的には物を造る施工業が中心です。
建設コンサルタントとは土木事業の計画・調査・設計を行う企業のことで、大手と言える企業として、「日本工営、パシフィックコンサルタント、建設技術研究所」などがあり、国土交通省や県の土木機関から委託されて業務を行います。
技術的なコンサルティングが主な仕事となっていますが、委託された業務内容を粛々とこなしているだけの企業も少なくありません。また、以前は測量や地質調査も自社で行う企業もありましたが、今は測量やボーリング調査などは、それを専門にしている測量会社やボーリング会社に委託しているのが殆どです。
建築分野との違い
建築士と言えば、日本でも有名な人はいて、皆さんも一度くらい名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。でも、土木の設計士で個人的に名前が知れ渡っている人はいません。それは何故でしょうか?
それは、建築分野の場合は建築士個人に委託されるからです。建築士が個人の名前で公募して自分の作品が採用されるケースは、今話題となっている新国立競技場の騒ぎでお分かりだと思います。
それと異なり、土木の分野では企業として入札に参加し、業務の遂行も企業全体もしくは社内のある部門で行いますので、企業の名前が出ることはあっても個人の名前は出ることはありません。ということは、建築の場合は個人に全責任がありますが、土木では企業の責任ということになります。以前、耐震設計偽装事件で個人の建築士が逮捕されましたのでお分かりだと思います。