関取になるまでの各地位の特徴

相撲番付フレーム・ライト ブラウン

まず、力士はプロスポーツ選手である

力士はプロスポーツ選手の1つであり、頑張って関取と言われる十両以上まで昇進すると一気に月100万以上の給料が得られたり、成績に応じて支給額が上がる仕組みがあったりするので、1億円プレイヤーも夢ではありません。また、地元では名が知れた存在になり、自分を応援する人が増えるので、人気者になる可能性もあります。幕内で活躍している遠藤関のような全国的に人気を集めている力士も中にはいます。

新弟子検査に合格すれば力士になれる

まず、力士になるためには条件があります。具体的には新弟子検査を受けて合格すれば力士になることができますが、その最低条件は23歳未満の男性で、身長167cm以上、体重67kg以上となっています。従って、女性はプロの力士になることはできません。これは、相撲がスポーツでなく神事の一種であることが理由の1つと考えられます。なお、中学卒業で入門する場合は身長と体重がそれぞれ2ポイントずつ緩和されて身長165cm以上、体重65kg以上となります。ちなみに5年前までは、身長173cm、体重75kgが最低ラインで、これ以下の場合は第2検査という身体能力のテストを受験しなければなりませんでした。具体的には、背筋力・50m走・握力など8項目あり、これらの項目の全て基準を上回ればクリアとなります。この検査を通過して関取になったケースが豊ノ島関や磋牙司関など続々と現れて、活躍できるようになった為、この検査は最終的に廃止されました。ちなみに、これら2人の力士は平成29年1月現在、現役で活躍しており豊ノ島関は関脇まで昇進しました。さらに15年前までは、この第2検査自体存在しておらず、基準以下の場合は不合格になってしまいました。その為、大相撲やほかのスポーツの解説者として有名な元小結舞の海関は検査前に、頭にシリコンを詰めて身長を少しだけ上積みさせて、検査を通過させていました。

その後、心電図・レントゲン・血液検査といった内臓検査を受けて合格した場合に晴れて力士になることができます。

まずは前相撲からスタート

ここからは、相撲部屋に入門してから昇進するまでの経路を辿っていきたいと思います。ただし、学生時代などで全日本・全国学生相撲選手権や国体などでアマチュア・学生横綱になったり、優勝したりするなどして優秀な成績を残した場合は、いきなり幕下や三段目付出としてデビューすることもできますが、今回はこのケースでなく、下から順々に取り上げます。

新弟子検査は年6回行われる本場所の初日に合格発表があるため、合格した場合、直ぐに、その本場所で相撲を取ることができます。ただし、まだ番付に名前がないので、前相撲という形で相撲を取り、2勝した地点で合格となります。合格した場合、場所の中日に出世披露が行われ、次の場所から序ノ口として、番付表の一番下の段に名前が載ることになります。昔は不合格の場合、次の場所も前相撲を取らなければならず、2連勝を4回しなければ合格できない仕組みになっており、番付に名前が載るまで1年以上かかったり、1度も載らずに引退したりするケースもありました。また、取り組みのルールも土俵に上がったらいきなりスタートするスタイルでした。現在は1回でも相撲を取れば、合格扱いになっています。逆に序ノ口力士が全休した場合、次の場所は、また前相撲から取り直しとなってしまいます。取り組みのルールもプロの取り組みと同じです。

ちなみに、この出世披露は所属している部屋の、関取の化粧まわしを付けて合格者が一斉に上がって、次の場所から力士として仕事をすることを1人ずつ紹介するイベントであり、この化粧まわしで、師匠が現役時代に使っていたものを用いているケースもあります。

また、千秋楽に優勝関連の行事など全てのイベントが終わった後に出世力士手打式があり、ここで若者頭という協会の職員を胴上げして、本場所を締める儀式に出席して、最初の場所を終えることになります。

番付に名前が載って本格的に力士人生が始まる

次の場所は序ノ口として番付に載り、いよいよプロの力士の階段を上り始めることになります。まず、相撲部屋から浴衣と帯、下駄、黒足袋など、日常に着用するものや、稽古に使う廻し等が支給されます。稽古場の上に掲げていることが多い木札に自分の四股名が追加されて本格的に力士らしくなります。ちなみに、この木札を書いているのは部屋の行司です。

ここからは1場所で7番相撲を取って4番勝てば勝ち越しとなり、次の場所から序二段に昇進します。逆に負け越しになっても、先述のように全て休まない限り、序ノ口から落ちることはありません。

また、その頃になると、相撲教習所に半年間通うことになり、そこでは実技を通じて基本的な所作や技術を体得し、座学で、相撲に関する基礎知識を学ぶカリキュラムが組まれているので、相撲未経験者でも力士としての常識を身につけることができます。寧ろ、このような付出し以外で入門したケースでは相撲経験者の他にサッカーや野球といった別のスポーツをやってきた人も結構います。例えば現役の高安関は中学時代に野球で中堅手として活躍した後に元鳴戸部屋に入門しました。学校を卒業して、すぐ入門した場合は、この場所で入学する形になり同期として入門した力士が多いので、まさに学生時代の雰囲気を少し味わえる空間になります。ちなみにプロである以上、同期同士のライバル心が強くなる傾向がありますが、中には番付が上がって関取になった後に仲が良くなって、同期を集めてお酒を酌み交わすことも、よくあるそうです。なので、同期はライバルでもあり、仲間でもあるような関係といって良いと思います。

その頃になるとホームシックにかかるケースもあります。たとえ中卒で入門しても親元を離れての生活になるのでストレスも大きいでしょう。丁度、新社会人の五月病や六月病のような感じに陥るのと近い状態です。これを乗り越えるのか、どうかも意外と1つの壁ではないでしょうか。

序二段に昇進すると、番付では4段目に載るようになりますが、定員がないので、非常に人数が多くなるのが特徴です。大体210~240人程度で推移していますが、新弟子が多かった23年前の夏場所は420人もいました。この地位になると負け越してしまうと陥落する可能性もあります。逆に7番全て勝てば、次の場所は即昇進になることが多いです。勝ち越せば少しずつ番付が上がっていきます。大体6勝1敗で70枚分、5勝2敗で40枚分、4勝3敗で20枚分の上昇が目安となっているので、ずっと4勝を続けても1年後には昇進できる可能性が高いです。そして、この次の番付は三段目です。

ピラミッド型を駆け上るために努力が必要

三段目に昇進すると、これまでとは扱いが少しグレードアップします。まず、服装は着物と羽織が支給され、下駄からエナメル性の雪駄になります。年6回の本場所ごとに支給される本場所手当は7~8万円から10万円台になります。体格も、だんだん大きく力士らしくなっていきます。この地位からの特徴は定員が設けられていることで、三段目は200人となっています。なので、その次の場所で、どれだけの人数が昇進するかは、この地位で陥落したり引退したりする力士の人数によって決まることが多いです。なので、次の幕下になるためには、これまでの四股・テッポウといった基本的な技術に加えて、申し合い稽古や三番稽古といった実践的な稽古も重要性を増してきます。

ここでも7番に全て勝てば、無条件で昇進する可能性が高いです。6勝で50枚分、5勝で25枚分、4勝で10枚分の上昇が目安となっています。

ここから先の番付の定員は上に行くほど少なくなる傾向なので、そこに入ろうと凌ぎを削る力士たちの根性と努力によって力を身につけたものだけが上がる厳しい世界を垣間見ることができると思います。

同じ幕下でも扱いは異なる

幕下は定員が120人で、この次の番付が十両、即ち関取です。この番付になると帯が、これまでの綿やウール製の物から、関取と同じ博多織にグレードアップし、雨の日には番傘を差すことができ、冬の寒い日にはコートを着ることができます。本場所の取り組みも、これまでの午前中から、午後の時間帯に完全に移行します。また、本場所で売られているパンフレットにも全員の名前が載ります。番付表に載る名前も縦長に少し大きく載り、十両力士と同じ段なので、三段目とは異なり関取にぐっと近づいた印象がすると思いますが、この番付が一番熾烈な争いが繰り広げられ、相撲ファンでも、この番付の力士を注目したり、取り組みに熱中したりする人が増え始めてきます。

さらに三段目と異なる点としては、同じ幕下の力士でも位によって扱いが異なる点も挙げられます。具体的には上位50人以内に入ると、本場所観戦の際に配られる当日の取組表の裏に、関取と同じように星取表に掲載されます。また、上位30人以内だと取り組みは幕下上位5番として扱われ、十両土俵入りの後に行われるため、取り組みも、座布団が用意されるなど、関取と近い形式で行われます。十両力士との対戦が組まれた場合は大銀杏を付けることもできます。そして、この地位から関取昇進への挑戦権が与えられます。ただし、昇進するかどうかは十両から陥落したり、引退したりする力士の数次第となっているため、場所によって同じ番付・勝敗を上げても昇進するケースと見送られたケースの両方が存在します。例えば10年前に上から4番目の番付だった元境澤関は5勝2敗だったにもかかわらず欠員が少なったため昇進できませんでした。普通のケースで、この地位でこの成績を収めた力士は十両に昇進する可能性の方が高いです。最後は運に賭けるしかないと言っても過言ではないでしょうか。

最後に

これらのように同じ取的でも昇進するにつれて、扱いがかなり変わってくることが分かりますが、番付表では全て前頭と書かれています。現在は小結以下、十両以上の力士の番付を差しますが、これは前相撲の頭という意味なので、小結以下は全て同じということになります。ただし取的は「同」、関取は「前頭」というように区別して書かれています。