親方の仕事あれこれ
親方になるためには
十両以上の関取まで昇進して活躍した力士が引退した後の進路の1つとして親方として日本相撲協会の職員になるという方法があります。ただし、それには年寄名跡を取らなければならず、それにはある条件があります。それは日本国籍を持っていて、通算30場所以上関取、若しくは通算20場所以上幕内として在籍していた場合や小結まで昇進した場合に条件が与えられます。この年寄名跡は全部で105個しかなく、もし空きがなければ誰かから借りることができれば親方になることができますが、序列は低くなってしまいます。また、現役中に名跡を取ることができ、大関だった琴奨菊関が秀ノ山を、新横綱の稀勢の里関が荒磯をそれぞれ取得するなど、既に9人が年寄名跡を持っています。ちなみに文中の秀ノ山・荒磯が名跡の名前で、引退して親方になった場合、秀ノ山親方のような呼び方で区別されます。ただし、相撲部屋を継承することが前提で取得する場合は、先述した通算場所数が約6割に緩和されます。この条件を用いて前宮城野部屋師匠の元金親関は年寄名跡を取得しました。
相撲協会職員としての仕事について
年寄名跡を取得し、引退して親方になると、まず行う仕事が本場所などの場内警備です。具体的には土俵で力士たちが行き来する花道の奥側に立って観客が力士に近づきすぎないように注意を与えたり、入れないようにしたりすることを中心に行っており、たまにテレビ中継で髷を付けている状態で立っている姿を見ることができます。この仕事を一定期間経験した後、次の種類の仕事が割り振られることになりますが、現役時代に大関まで昇進したり、人気が出ていたりした親方の場合、ある程度コースが定まっており、土俵周りの、審判係の仕事や広報担当の仕事が与えられるケースが多いです。この審判係の仕事は取り組みで行司が挙げた判断がおかしいと見なしたときに5人で協議した上で最終決定を下すことがメインで、正面側に座っている親方が審判長で最終決定をマイクで告げます。また、向正面で行司の左側に座っている親方は制限時間を測定して呼出に報告する時計係も兼務しています。後者の場合は、新聞社などのメディア関係と接したり、観客に喜ばれたり、集客数が増えるための企画を考えたりする仕事が主に行われております。これらの仕事はいずれもテレビなどに映ることが比較的に多い仕事であるため、現役時代に名を馳せた親方を用いることで相撲ファンに親近感を与える意図があると考えられます。
親方の仕事は、この他にも本場所でチケットの受付を担当する木戸係や、新人力士が半年通う相撲教習所の指導係、年3回東京以外で行われる地方場所や巡業を開く際に、事前に現地に向かって準備をする係など多岐にわたり、本場所などの、興行の大半を分担して運営しています。
日本相撲協会の職員のような存在であるため、もちろん役職が分かれており、最高位は理事長で現在は第61代横綱北勝海関の八角親方が勤めています。その他に理事、副理事、委員、平年寄などがありますが、理事になるためには2年に1回、初場所後に開かれる理事会選挙に当選する必要があります。それ以前に、一門内で立候補者を絞った上で開かれるため、それまでに実績を積んで一門内から信頼を得る必要があります。
相撲部屋の指導員としての仕事について
親方には、協会全体の仕事の他に、所属している相撲部屋の力士を育てるという大切な仕事もあります。具体的には、力士達の稽古を技術面で指導するのは、もちろんのこと。これに加えて集団生活に慣らすための精神面で指導したり、ちゃんこ番などの力士が行う稽古以外の行動を監視したりしています。
また、親方には主に部屋の師匠になるか、ならないかの2つのパターンに分かれ、前者を部屋持ち親方、後者を部屋付き親方と区別されています。師匠には全親方共通の仕事以外にも部屋を運営していくために有望な若者をスカウトするために全国各地を飛び回ったり、テレビなどのメディアに出演したりする必要があります。
このように親方は協会全体と弟子育成の仕事を主に熟しています。