関取の各地位の特徴
十両から1人前のお相撲さんと見なされる
1場所で数人しか枠が開かない十両に昇進すると、ようやく1人前としての扱いを受けることになり、この番付から月100万円を超す給料が支給されます。また、1人前になった証として紋付の羽織が師匠や後援会などから支給され、同時に支給される袴と白足袋を着用すると、これぞお相撲さんという格好になります。また、葬式などの正装用として黒色の紋付も用意されます。
そのような十両に上がることができる最低条件は幕下の上位30位以内の番付にいることです。相撲界に入る前に国体で優勝するなど、相当優秀な成績を収めていた場合、この番付からスタートすることもできますが、普通の番付よりも下に見なされる付出扱いになります。あくまでも、これは最低条件であり、十両の定員が1枠も開かなかった場合、7番全て勝っても十両昇進が見送られてしまいます。
この十両の正式名称は十枚目であり、番付表も幕下と同じく上から2段目に書かれますが、字の太さが大きく異なり、肉眼でもハッキリと見える感じになります。また、十両の定員は13年前に28人以内と決まっています。この名称の由来は昔、この番付の力士の年収が10両だったことが有力となっています。
十両は幕下からのグレードアップが沢山ある
まず、十両になった場合のグレードアップは天と地の差ほどあると言っても良いぐらいです。具体的には先述した月給や正装の支給があるほかに、雪駄を、これまでのエナメル製から畳製にすることができます。これまで使っていた廻しの色が豊富なものとなり、稽古場で使うものと、取り組みの際に用いるものに分けることができ、前者の色は黒色から白色に変わり、取的力士との区別をはっきりとさせているのが特徴です。後者の色は実に様々なものがあり緑色や青色などの落ち着いた色から、橙色などの奇抜な色の廻しで土俵を取っている力士もいます。ちなみに、この取り組み用の廻しの事を締込と呼び、その下部にある複数の紐状のものを、さがりと呼び、全部で17本前後あります。
また、取組前に十両力士が一堂になって土俵入りするイベントにも参加でき、その際に化粧回しを付けて自己アピールに近いことができます。この十両力士の土俵入りはNHKだと衛星放送を通じて見ることができます。ちなみに、この締込や化粧回しは後援会や学校関係者などから提供されるケースが多いため、複数持っている力士もいます。このように本場所の際に用いる荷物が多くなるため、それらを入れるための明け荷も支給されます。
また、本場所では大銀杏を付けることができたり、取り組みまでの控えスペースに座布団を敷くことができたりするなど新たに許される事項が多いのも特徴です。また、土俵上で塩を使えたり15日間全て出場できたりするのも、この番付からです。
生活面でも、付け人という自分が所属している相撲部屋の取的力士に洗濯や炊事などを行わせたり、本場所で使う荷物を持たせたりすることができます。いわゆる足を拭く立場から拭かせる立場に一変します。
さらに、これまで相撲部屋と本場所の会場の行き来が電車などの公共交通機関しか使えなかったのが、タクシーを使うことができるようになったり、移動の際に用いる飛行機ではエコノミークラスからビジネスクラスを使えるようになったりするなど、幕下と比べてグレードアップすることが沢山あります。
前頭から有名になれるチャンスが増える
十両の上の番付である前頭に上がると、できることも多いです。まず、前頭の位置づけは横綱や大関と同じ幕内です。この幕内では番付表では一番高い位置に名前が書かれ、字の大きさも十両の時と比べて、さらに大きくなります。土俵入りの際も幕内土俵入りとして大関などの力士と同じ土俵に立つことができたり、この地位で優勝した場合、幕内最高優勝という相撲界で最高の栄誉が与えられ、1000万円の賞金や天皇賜杯、各団体の賞状と景品などを受け取ることができたりします。さらには優勝額を毎日新聞社から送られ、これは5年余りの間、国技館の上の方に掲げられるので、一気に有名になる可能性もあります。
十両から前頭に上がることを新入幕や再入幕と呼ばれていたり、この番付の力士の事を平幕力士と呼ばれていたりすることも、前頭が幕内の1つであることによるものだと思われます。この時間帯はNHKの中継でも全体的に放送されることが多いので、知名度を高めることができる可能性があります。ただし国会中継やスポーツ中継などで半分の1時間以下に短縮された場合は映る可能性は低くなります。
前頭に昇進すると、本場所で使っていた共通の座布団が自分専用のものを使用することができます。それを表すために自分の四股名を入れた座布団を用意します。他にも着物に自分の四股名が入った浴衣や夏には染め抜きを使用することができるため、自分の名前を売り込むことができるチャンスと考えられます。また、横綱力士の土俵入りの際に太刀持ちや露払いを務めることができたり、取り組みに懸賞金が付いたりする点も、この番付からです。給料も月給ベースで約1.25倍に増え、付け人の数も増やすこともできるなど、十両とは違った待遇を受けることができます。
三役から幕内の別格扱いになる
三役というと、偉いさんというイメージを抱く人もいると思いますが、相撲界でも上位の番付である小結、関脇、大関の事を指します。横綱が最上位でないのは後から、つけられた番付だからです。また、一般的には大関は別格と見なされるため、ここでは小結と関脇を三役として記述します。
前頭から、この三役に昇進する条件は勝ち越すことと、定員が開いていることの2つがベースです。三役に昇進すると本場所の初日や千秋楽に行われる協会ご挨拶や、前日の午前中に行われる土俵祭りという儀式に出席できます。また、番付表でも小結のように前頭以外の番付で表記されるうえ、文字も大きくなります。給与面でも、ベースの月給は前頭時代の約1.3倍になり、特別手当が出るなど、さらに手厚くなります。
定員は両方とも2人ずつです。21年前までは張出関脇のように番付表の欄外に名前が書かれる張出制度があった頃は定員を超えて各番付に3~4人いる状態もありましたが、今はそのようなケースは少なくなっています。
大関で最高クラスの扱いを受けられる
大関は先述したとおり、三役力士の中でも別格とされており扱いも大きく異なります。例えば、東京で行われる本場所の際、国技館の地下駐車場にタクシーを乗り入れることができます。交通機関の移動手段も、新幹線ではこれまでの指定席からグリーン席、飛行機ではビジネスクラスからファーストクラスにグレードアップできます。給料も約1.4倍に増加します。昇進基準も、これまでとは異なり三役の番付において、半年間で通算33勝前後が目安とされていますが、この数字を満たしても元大関琴光喜関の1回目の大関挑戦のように、成績にムラがあった場合に見送られてしまったり、逆に、第72代横綱稀勢の里関のように基準を満たさなくても将来性が期待されると判定された場合に昇進したりするケースが少なからずあります。
また、昇進が決まった際の扱いも、これまでは番付発表まで待つ必要がありましたが、大関では本場所が終わって3日後に昇進伝達式という儀式の後、直ぐに大関と見なされます。2場所連続で負け越すと陥落しますが、次の場所で10勝以上上げれば大関に戻ることができる特権もあるのも特徴です。
最高位横綱は責任を伴う番付である
相撲界の頂点である横綱に昇進すると、給料の伸びは大関時代の1.2倍で鈍化しますが、横綱土俵入りを集団でなく個人単位で行えたり、知名度が大きくなったりします。なお、昇進基準は2場所の連続優勝か、それに準ずる成績を残した場合と定められています。これも大関と同じく曖昧な面もあります。昇進伝達式がある点も大関と同じです。
また、協会の一員としての活動も増えるなど責任が大きくなります。これは負け越しても陥落しないという特権に対しても言えることで、成績が悪ければ自分の意志で引退しなければなりません。最高位の横綱はそれだけ重責を伴う番付でもあります。