猫だましの狙いとメリット・デメリット
相撲の取り組みでは猫だましという戦略方法があります。普通は立ち合いでは相手に全力で額あたりをぶつけたり、廻しを求めて手を出したりすることが多いですが、この猫だましでは敢えて、そのようなことをせずに相手の目の前で手を叩く動作をします。これをすることで相手が驚いて目をつむったり、顔をそむけたりすることによって、自分の得意な形に持ち込めたり、後ろや真横に回り込んで送り技を仕掛けたり、足を蹴って相手のバランスを崩しにかかったりしやすくなります。猫だましの効果は、その取り組み1回だけでなく、次に同じ相手と取り組む際、やられた相手はまた同じようにやられるのではないか等と恐怖心を抱くこともあり、その場合は自分の得意な形に持ち込め易くなることから、持続性が少なからずあるというメリットもあります。現に明治時代に活躍した第20代横綱梅ヶ谷関は平幕の大見崎関に関脇時代、猫だましを食らってしまい、そこから同じ大見崎関に少なくとも5回負けてしまいました。
普通はこのように、格下の力士が的に戦ってもかなわないと考えて大関などの各上相手に対して行われることが多いですが、最近は第69代横綱白鵬関が春日野部屋所属の格下である栃煌山関に対して2回行ったことで一時話題になりました。これはメリットよりもパフォーマンス的要素を狙って行ったものだったと考えられます。
猫だましがあまり見られないのは、それを行っても相手が怯まなければ、両脇が開いている状態になるため、廻しを簡単に取られてしまったり、相手の突進をモロに受けてしまったりしてしまうなどして逆に不利になってしまうためと思われます。
なお、猫だましは真っ向勝負を避ける点と素早い動作が必要な点から、立ち合い時に素早く横に回って足を叩いたり、叩き込んだりして倒す変化の動作と似ていますが、あくまでも自分の有利な体勢に持ち込むための戦略の1つとして用いられているものであり、それだけで勝つことを目的にしている変化とは、また異なるものだとされています。