貴乃花部屋と関取紹介
一代年寄である貴乃花関所有の貴乃花部屋とは
貴乃花部屋の前身は、後述する父親の元貴ノ花関が師匠を務めていた二子山部屋です。貴乃花関は現役時代に22回の幕内最高優勝を果たしたり、最年少記録を次々と残したりした実績を評価されて現役時代の四股名を使って定年まで親方として働ける一代年寄の権利を与えられました。引退後1年間は二子山部屋の部屋付き親方として後進の指導に当たった後、二子山部屋を継承する形で平成16年2月に師匠になり、部屋の名前も年寄名としての貴乃花に変更されたことにより貴乃花部屋は誕生しました。
その貴乃花部屋は現在、江東区東砂に部屋を構えており、少し歩けば荒川に行くことができる所に位置しています。国技館へは最寄り駅が徒歩15分程度で少し遠いですが、地下鉄を使って30分以内で行くことができるため、比較的通いやすいところではないかと思われます。ちなみに去年の夏場所までは、以前の二子山部屋と同じ中野区本町に部屋を構えていましたが、そこから国技館へは、地下鉄でも40分ぐらいかかる位置にありました。
貴乃花部屋には、現在、幕内で活躍している貴景勝関と貴ノ岩関を初めてとして力士10人が在籍しており、10人とも四股名が貴の字から始まるのが特徴です。力士の他に元光法関の音羽山親方と、床山が1人と、世話人の1人で元幕下力士嵐望も所属しており、少なくとも15人が共同生活をしております。この他にも、かつて親方と同じ二子山部屋などで生活を共にした元大関貴ノ浪の先代音羽山親方も後進の指導に当たっていましたが、2年前の6月に亡くなってしまいました。
貴乃花部屋のおかみさんは、現在52歳で、親方よりも8歳年上の姉さん女房でもある元フジテレビアナウンサーの河野景子さんで、親方が横綱としてスタートした平成7年に結婚しており、部屋を継承した当時からおかみさんを務めています。
貴乃花部屋では貴乃花関やおかみさんなどが、テレビなどのメディアに度々露出することで有名ですが、稽古見学の一般公開は春場所などの地方場所ではありますが、本場所では後援会に入会しないと見学できる可能性は低くなってしまいます。貴乃花部屋のちゃんこ鍋は基本的な醤油ベースの豚汁のような具に肉団子が入っているものから、トマトちゃんこ鍋といって、トマトが入っているものの唐辛子やガーリックが効いたピリ辛味のベースに豚肉や鶏肉などの肉類やエビやイカなどの魚介類も入ったバライティが豊富なものまで幅広い種類があります。
平成最初の大横綱である第65代横綱貴乃花関の紹介
貴乃花部屋を興した、第65代横綱貴乃花関は昭和47年8月生まれの44歳で、父親は当時二子山部屋に所属しており、既に三役で活躍し、最終的に大関まで昇進した元貴ノ花関の元藤島部屋師匠で、その兄が栃若時代の1人で知られている、第45代横綱若乃花関で、当時の二子山部屋師匠という相撲一家の元で育ちました。ちなみに母親は女優で活躍している藤田紀子さんです。このような環境の下で育ったことから、少年時代から相撲中心の生活をしており、10歳の時には父親が藤島部屋を起こしていたため、稽古に専念できたり、稽古相手として5歳年上で後に同じ部屋で凌ぎを削ることになる元大嶽親方の元大関貴闘力関がいたりして力を身につけていき、実力も小学5年生で全国大会を優勝するほどでした。中学生の相撲部で技術力も身につけた上で、卒業後の昭和63年春場所に当時の藤島部屋から初土俵を踏みました。ちなみに、この場所に初土俵を踏んだ力士から、東関部屋所属の第64代横綱曙関、現浅香山部屋師匠で友綱部屋所属の元大関魁皇関、そして兄である第66代横綱若乃花関が活躍したことは有名で、このグループのことは「花のロクサン組」と呼ばれています。このうち曙関とは大関に昇進してから4年半もの間、優勝をかけた取り組みを何度も経験し、最終的に、これらの取り組みを含めて対戦成績が21勝同士の五分五分のライバルとなりました。
貴乃花関は入門した当初、本名から貴花田を四股名として相撲を取っていました。中卒での入門にも拘らず既に基本的な力や素質は備わっており、入門して1年半近く負け越すことなく番付を上がり、負け越す前の場所である平成元年夏場所では7戦全勝で幕下優勝を果たしました。当時、まだ16歳の高校2年生に該当する年での優勝は史上最年少記録として未だに破られていません。それ以降も最年少記録を次々と打ち立てるほどのスピード昇進は続き、その年の九州場所には関取の座を掴み、その半年後には新入幕を果たしました。そして同級生が高校を卒業するころの平成3年には既に、幕内上位に定着するほどの実力を有していました。この頃から三賞を受賞するようになり、特に平成3年夏場所の初日で昭和の大横綱の1人だった第58代横綱千代の富士から初金星を挙げた一番は有名ではないかと思います。ちなみに貴ノ花関が上げた金星は、この1個だけで、これは金星受賞対象外の三役に定着するのが早かったことも一因と考えられます。
貴乃花関の強みが左右どちらの四つに組み止めても、そこから寄り切ったり、上手投げを打ったりできることだけでなく、廻しを取らない突き押し相撲でも力を発揮できていたため、三役定着後も着実に実力を伸ばしていき、平成4年初場所には前頭2枚目で14勝を上げて幕内最高優勝を果たし、三賞も殊勲賞・敢闘賞・技能賞の3つを総なめにしました。この当時、まだ10歳代であり、このような力士は今も現れていません。その丁度1年後に大関昇進を果たし、貴ノ花へ四股名を変えました。大関でも体調不良を起こした1場所だけ負け越した以外は全て11勝以上の好成績を残し、昇進して2年後に第65代横綱へ昇進しました。この直前には今の貴乃花へ四股名も変えています。そして、環境の変わり目などから難しいとされている新横綱での優勝も果たしました。
横綱になってからの4年間は、毎場所のように優勝を重ねたり、それに至らなくても優勝決定戦に顔を出し続けたりするほどの実力を発揮し続け、26歳で迎えた平成10年秋場所では遂に幕内優勝回数を20回まで伸ばしました。ただ、その間も急性腸炎や肝機能障害で途中休場したり、全休したりした場所もあり、翌年からは、それが顕著に表れてしまいました。取り組み中に左肩の骨折を始め、左薬指の脱臼や左の上腕二頭筋の断裂などの怪我を負い休場することが多くなってしましました。しかし、それでも平成13年夏場所に14日目に右膝半月板の大怪我をして土俵に立てるのが難しい状態にもかかわらず出場して第67代横綱武蔵丸関との優勝決定戦を制しての13勝で幕内優勝するなど2回の幕内優勝を経験するなど、復調の兆しも見えていました。やはり、この怪我が重傷だったため、皆勤できた平成14年秋場所以外、全休を繰り返した末、平成15年初場所中に30歳で現役を引退しました。ちなみに、この場所は第68代横綱朝青龍関が優勝して横綱昇進を決めた場所であり、千代の富士関が引退した場所で本格的にデビューしたことを考えれば、貴乃花関が平成の大横綱の1人として1つの時代を作ったと言っても過言ではないと思います。
スピード出世で今後が期待される若手力士、貴景勝関
貴乃花部屋に所属している関取は2人います。まず、貴景勝関は平成8年8月生まれの20歳で、少年時代は相撲の他に空手を経験していました。小学校高学年頃から相撲に専念し、中学生の時に全国中学生相撲選手権大会を優勝したり、高校では境川部屋所属の大関豪栄道関などを輩出した埼玉栄高校に相撲留学できたりするなどの実力を持っており、この高校時代には国内の全国大会制覇だけでなく、台湾で行われた世界ジュニア相撲選手権大会でも優勝する実績を残しました。そして高校在学中だった平成26年秋場所に、貴乃花部屋に入門して初土俵を踏みました。
出典:http://www.sumo.or.jp/ResultRikishiData/profile?id=3582
貴景勝関の強みは突き押し相撲で、この内容が直ぐに活かされる形で入門してから幕下上位で1度負け越した以外は全て勝ち越したり、三段目以外の優勝を経験したりする実力で、平成28年夏場所には20歳を前に関取の座を掴み、その場所は無傷で勝ち越すなどの活躍を見せるなどし、最終的に11勝を上げるデビュー場所となりました。さらに今年の初場所では新入幕を果たしました。この新入幕を機に四股名も本名の佐藤から貴景勝に変更されました。この貴景勝という名前は戦国時代の武将である上杉景勝に因んだものです。この場所は7勝止まりでしたが、関取に定着する実力を有している若手であるため、幕内上位での活躍が期待される力士の1人といってよいと思います。
多彩な強みを活かして上位定着が期待される貴ノ岩関
もう1人の関取である貴ノ岩関は平成2年2月生まれの27歳で、モンゴルの首都ウランバートルから相撲留学の名目で来日し、宮城野部屋所属で貴ノ岩関と同い年の石浦関などを輩出した名門校である鳥取城北高校で相撲の基礎を磨いた上で、19歳になる前の平成20年11月に貴乃花部屋に入門し、翌年初場所で初土俵を踏みました。
出典:http://www.sumo.or.jp/ResultRikishiData/profile?id=3146
貴ノ岩関は、入門してから3年半で関取の座を掴んだ後は、その地位に定着しており、その1年半後の平成26年初場所で新入幕を果たしました。この間に右四つの形に組んでからの寄りや出し投げの強みを手に入れただけでなく、逆の左四つの形になっても近い位置の上手を掴んでの出し投げができたり、廻しを取れなくても突き押しで土俵外へ追い詰めていくことができたりする力を身につけて、去年からは幕内にも定着する実績を残すようになり、今年の初場所では前頭10枚目の番付で11勝を上げた上、平成の大横綱の1人とされている第69代横綱白鵬関から金星を勝ち取り、殊勲賞も獲得する大活躍を見せ、この春場所では自己最高位の西前頭2枚目まで昇進し、一度跳ね返された幕内上位での実力試しがまたできるようになり、三役昇進が期待される力士となっております。