愛されて育つ大切さ「「赤ちゃん縁組み」で虐待死をなくす 愛知方式がつないだ命」

2018年4月7日

[矢満田 篤二, 萬屋 育子]の「赤ちゃん縁組」で虐待死をなくす~愛知方式がつないだ命~ (光文社新書)

子どもは親を選べない、ということは良く聞く言葉かもしれません。また、親と同時に家庭環境や生育環境も選べません。ただ、親を選べなくとも生まれて家庭があるのが当たり前ということが世間一般です。しかし、生まれてすぐに親がいないという子どもがいるのです。生まれてすぐに自身で何ができるのでしょうか。愛情ある親や大人に育てられなくては生きていけません。どうしても親が育てられないときどのような方法があるのか、愛知の新たな縁組みや家庭について書かれている本です。

愛知方式という特別養子縁組があります。愛知県の児童相談所では、産んだ母親が何らかの事情で赤ちゃんを養育することが困難な時に、その赤ちゃんを生まれてすぐに特別養子縁組を前提とした里親委託により、家庭のなかで育てていくという仕組みです。この取り組みは他の自治体ではなく注目されています。

著者の矢満田氏が新生児の特別養子縁組をすすめ、そこに萬屋氏が愛知方式として新生児からの縁組みを定着させていく、赤ちゃんが家庭で元気に育っていくための二人の仕組み作りに奔走している姿があります。そのエピソード以外にも養子縁組が分かりやすく書かれています。

特別養子縁組の方法やどのような過程で行われていくかの解説があり、どうして赤ちゃんを縁組みを初めたのかも書かれています。虐待死の中で最も多い0歳0カ月0日の虐待死があるのもこの赤ちゃん縁組みの仕組みが出来た一つの因子となっています。
子どもは反応性愛着障害があることも多く、必死に大人に訴えかけている姿があります。誰にも愛情を注がれていないと子どもでも分かり愛情を欲するのです。この愛着障害についても事例から制度についてメンタルについての解説もあります。

そして、赤ちゃんの幸せのために愛知方式という子どものための縁組が立ち上がり、児童相談所所長でもあった萬屋氏は赤ちゃん縁組みと出会い、その子どもへの及ぼす良い影響について接し、赤ちゃん縁組みを広げる活動もしています。また、愛知方式では家庭のなかで子どもが育てられることにより子どもの健全な生育や親子関係に良い影響があることが強調されています。

赤ちゃん縁組みのメリットは、予期せぬ妊娠で苦しむ女性の赤ちゃんをきちんと育てる仕組みを作ることで育てることのできない親の心を軽くしたり、赤ちゃんが生まれてまもなくして安定した生活環境である親に巡り会える、里親は赤ちゃんを受け入れたいと思っているので赤ちゃん縁組みとに恵まれ親となり不妊治療などの困難から解放されます。

赤ちゃんがその産んでくれた親のもとで育つことができない場合、そのような環境だからこそ早いうちに赤ちゃんが安心して過ごせる家庭や親が必要なのかもしれません。子どもを育てるとはどういうことなのか、親子関係とはどうあるべきなのか改めて考えさせられる内容になっています。