なぜ鶏肉は特別なのか

鶏肉が牛肉・豚肉とは異なる存在であるケースがある

[奥田 和美]のたっきーママの鶏むね鶏もも大人気レシピ152 (扶桑社ムック)

普段、スーパーなどで肉を買ってきたときの調理方法として豚しゃぶのように茹でたり、唐揚げのように衣をつけて揚げたり、フライパンなどでさっと焼いたりする方法が考えられます。手軽さを考えれば、ちゃんこ鍋の鍋料理では肉を切って鍋の中に野菜と共に入れて加熱するだけで、出汁を予め入れるか、食べるときにつけるかすれば、おいしく頂けるし、焼肉では牛カルビ肉などのタレ付の場合はそのまま焼き、普通の肉でも焼肉のたれなどを焼く際にかけたり、食べるときにかけたりすれば、おいしく頂けるので、普段忙しい会社員などではピンと思いつく肉料理ではないかと思われます。特に焼肉丼はキャベツなどの野菜を切るなどの下ごしらえをし、ゴマ油などの油を敷いたフライパンに牛バラ肉などの肉を熱して、醤油などのお好きなタレを混ぜて炒めておき、ご飯と野菜の上にのせれば完成で、使う野菜や肉、たれが自由に組み合わせたりできる上、ボリュームも豊富なので作りやすいと思います。

ところで、この焼肉丼や外食などの焼肉に用いる肉は大抵、牛バラ肉などの牛肉や豚ロース肉などの豚肉が多く、料理本やクックパットなどの食事メニューサイトに載っている物の大半は牛肉か豚肉です。鶏モモ肉などの鶏肉は少なく、乗っていても、肉の種類を問わないものや、焼き鳥や焼き鳥丼の1種として扱われるものが多いです。一部、胸肉の焼肉丼として鶏胸肉を扱った料理もありますが、全体的には少ない傾向にあります。

また、牛肉に醤油と砂糖・みりんなどの甘辛い出汁で煮込んでご飯の上に載せて食べる牛丼でも、肉類を豚肉に変えれば豚丼として、そのまま通用することが多いですが、鶏丼の場合は、名前自体、牛丼や豚丼のように広く通用しているとは考えにくく、肝心の味も焼き鳥のタレで味付けをしている焼き鳥丼を指すケースもあれば、鶏肉などの具材に卵と共に甘辛い出汁で煮込んでご飯の上に載せた親子丼を指すケースもあるなど、バラバラでした。ちなみにこの甘辛い出汁を作るのが面倒な場合は市販のすき焼きのタレでも似たような味になるので、牛丼や豚丼を作りやすくすることができます。この事から、鶏すき丼ならば牛丼や豚丼のイメージに近い鶏丼が食べられる可能性があるのではないかと思われます。ただし、生卵が上にのっているパターンもありますので注意が必要です。また、豚丼でも一時、牛丼チェーンでも販売されていましたが、十勝風の豚丼の場合は牛丼のような味付けではなく、砂糖などの甘味が強い味付けになっており、焼き鳥のたれに近い味わいになっています。

これらのように、鶏肉だけが、なぜ異なるのかを扱っていきたいと思います。

鶏肉に用いられるニワトリは他の食用肉とは異なる構造を持っている

一般的に、食用肉は動物のどの部分が用いられているかと言いますと、モモ肉やロース肉など一般的に市販されている肉は筋肉の部分が該当することが多いです。ちなみに焼肉店などでレバーや牛の腸の1種であるミノなどもありますが、これはホルモンと呼ばれていて臓器部分を指しています。

そもそも鶏肉はニワトリの肉です。ニワトリは2本足の生き物ですが、牛や豚などは4本足の生き物です。つまり、そこから取れる肉の味や種類はかなり異なってきます。これら3つに共通するのはモモ肉だけです。一般的に高級部位として知られている牛や豚のヒレ肉は鶏肉にもありますが、ササミ肉となり名称が異なります。そして、牛肉では主に前足から肩部分の肉を指す肩、下側の部分肉を指すバラ、主に筋肉部分の肉を指すロースなどは豚肉にも存在しますが、鶏肉にはありません。鶏肉の場合は脂肪が少なくてヘルシーな胸肉、逆に脂肪分が豊富な皮肉、翼部分の手羽先・手羽中・手羽元の肉が存在しています。なお、ハンバーグや餃子などで用いているミンチとも呼ばれている、ひき肉は牛ひき肉や鶏ひき肉のように共通した名前ですが、これは、販売している店によって異なりますが、部位が異なったり、複数の部位を混ぜて作成してしたりするものとなっています。

ちなみにジンギスカンなどで用いることが多い羊肉は豚肉と似たような部位から構成されており、馬刺しなどで用いられることが多い馬肉は牛肉に近い部位から構成されており、共に4本足の生き物となっています。

このようにニワトリが他の食肉用に用いている生き物とはそもそも構造が異なることから食用肉としては特別な位置づけになっているのではないかと思います。ちなみに、相撲部屋で食べられることが多い、ちゃんこ鍋には主に寄せ鍋で用いられるような白菜やネギなどの野菜と肉類や魚類が入っていることが多いですが、そこで用いられている肉類は鶏肉が多く、鶏モモ肉や、鶏ひき肉から作られた団子などが入っているケースが多いですが、これは先述したようにニワトリは2本足の生き物であり、牛のような4本足で立っている姿では、土俵に両手がついているようなイメージが浮かび、相撲では足以外の箇所が付くか、土俵の外から出てしまった場合は負けと見なされることがから、そのようなイメージを避けるための縁起的な意味合いで鶏肉を使っているという説があります。もちろん、豚バラ肉など他の肉を使ったちゃんこ鍋も存在しています。

鶏肉自体は味が薄く、食感を味わう目的がある

鶏肉を使う料理として、具体例を複数あげると、焼き鳥・親子丼・ローストチキン・唐揚げ若しくは竜田揚げ・棒棒鶏(バンバンジー)などがありますが、これらは、いずれもすき焼きのたれやスパイスなどを用いて鶏肉に比較的濃い味付けをして作られることが多く、唐揚げや竜田揚げの場合も、揚げる前にニンニクや醤油などのたれで下味をつけて作られており、鶏肉の味自体を満喫する料理は少なく、具体的には焼き鳥の塩でも、塩ダレでなく、ただ塩を振って焼くものが挙げられます。

一般的に食用肉自体の味の濃さとして有名な肉では牛肉、豚肉、鶏肉の順であることが多く、例えばしゃぶしゃぶで、これらの肉を味わった時に分かることが多いと思いますが、牛肉では、何もつけなくてもバラ肉など脂身が含まれている部位を中心に、脂の旨味や甘味が味わえる可能性があり、値段は張りますが、松阪牛や神戸牛などの高級牛肉の場合はより、これらの旨味を味わえるという評判もあります。一般的に良く用いられる豚肉では味は牛肉よりは薄くなるものの、バラ肉などの脂身では本来の味が楽しめるのではないかと思います。一方、鶏肉ではモモ肉を中心に肉の食感は楽しめますが、味は感じにくく、豚しゃぶのようにポン酢やゴマダレをつけないと肉の旨味を引き出しにくくなると考えられます。

各食用肉の味の濃さが分かりやすい事例として豚肉が用いられることが多いとされている生姜焼きが考えられ、作り方や店などによって味付けは異なりますが、生姜焼きの味付けで使われる生姜醤油などのタレの濃さが豚肉の脂身などとマッチするようにされているため、このタレを用いたり、同じ味付けで生姜焼きを作ったりした場合、牛肉のように味が強い肉だと肉の味が強く、タレの味を感じにくくなります、鶏肉のように味が薄い肉の場合はタレの味が中心になってしまいます。また、焼肉丼などで味が濃いキムチなどと一緒に、これらの肉を食べた場合でも鶏肉の場合は圧倒的にキムチなどの辛味が勝りますが、牛肉や豚肉の場合だと前者を中心に肉の旨味とマッチして美味しく頂ける可能性が高まります。

以上の例から、鶏肉は牛肉や豚肉とは異なり、肉自体の味が薄いものの、ささみ肉やモモ肉などの独特の歯ごたえを味わえるメリットがある肉であると考えられます。

ちなみに羊肉や馬肉は牛肉や豚肉と同じく、味が濃い傾向にある肉となっているため、鶏肉が他の肉とは異なる傾向を示していると言えるのではないかと思います。