揚げ物料理の衣はどんな味がするのか
揚げ物は衣が付いたものだけではない
まず揚げ物として思い浮かぶものとしては、トンカツ、唐揚げ、天ぷらのように具材に衣をつけているものが考えられますが、そもそも、揚げ物の定義は大量の油の中で温めた料理や方法であるとされており、先述のような衣をつけたものばかりでなく、獅子唐やニンジンなどの野菜を、そのまま油で揚げた料理として素揚げがあり、生姜焼きなどメインの料理に沿えたり、サラダの1種として使われたりしていることが多いです。ちなみに油揚げや厚揚げは豆腐を切って油で揚げて作られ、さつま揚げはスケトウダラなどの魚のすり身をそのまま油で揚げて作られることから、素揚げに区分されます。
また、これまで取り上げてきたような昼食や夕食などに出ることが多いタイプだけでなく、朝食やおやつ等に出ることの多いお菓子にも揚げ物は存在しており、例えばドーナツは砂糖や卵などから作られた生地に薄力粉などをかけて油で揚げて作られることが多いです。
揚げ物は主に4種類に分かれている
揚げ物の種類として大まかに4種類に分けられることが多く、具体的には先述した素揚げの他に、唐揚げ・天ぷら・カツがあり、これらは野菜や肉類などの食材につける衣の種類によって区分されます。つける衣の種類としては唐揚げが主に小麦粉や片栗粉、天ぷらが小麦粉と卵、カツが主にパン粉となりますが、唐揚げは衣をつけずに揚げるパターンがあったり、フライにはトンカツなどのように天ぷらで用いられている材料をプラスして作られたりするなど例外もあります。
また、揚げ物は油の中に具材を入れて作られるので、その具材が油を吸収することになります。例えば唐揚げでは10%ほど、カツでは20%程度の油が吸収されてしまいます。ちなみに油1gを摂取すると9kcalも摂取することになり、400gのトンカツでは豚肩ロース肉など同じ種類の肉を茹でて食べるしゃぶしゃぶ等の料理と比較した場合、なんと720kcalも増量してしまいます。このベースの豚肉だけでも凡そ1000kcalあることを考えれば、トンカツのボリュームが如何にすごいものなのかが分かるのではないでしょうか。ちなみにヘルシーとされている野菜の素揚げでも5~15%の油を吸収するため、そのまま出される生野菜のサラダやおひたしなどに比べると高カロリーになります。例えば茄子の場合、茹で茄子の場合は100gあたり20 kcalほどなのに対し、素揚げだと100gあたり184kcalもあり、9倍以上に跳ね上がります。
揚げ物の衣の味を楽しめる天ぷらやカツの衣は基本的に甘いと考えられる
このように揚げ物は主に具材、衣、油から構成されている食べ物です。このような揚げ物は串カツ等のように油濃い上、高カロリーであるけれども美味しいと感じる人が少なからず、いらっしゃると思いますが、揚げ物の魅力として考える要素としては、野菜や肉類などの具材自体は勿論のこと、出来立てのカリッとした食感や油が混じった衣の味などが上げられるのではないかと考えられます。揚げ物の中でも素揚げや唐揚げの場合は衣がない料理が多いため、主に具材や食感をベースに旨いと感じることが多いと思われます。クジラの竜田揚げのような唐揚げの場合だとベースの肉に醤油やみりんなどの調味料を用いて塩味や甘味を与えていることから、小麦粉などで作られる衣よりも、その食材や調味料から味を楽しむことができます。ちなみに唐揚げの種類でもフライドチキンのように衣に塩コショウなどの味付けをして揚げている料理もあり、このような場合では衣の味が旨いと感じる人もいるかもしれません。
そもそも、食べ物の味は甘味・酸味・塩味・苦味・旨味の5つの基本的な味を舌で感じることによって得られることが多く、甘みを与えるのが砂糖のように、材料によって与える要素の種類は異なります。先述したように天ぷらやカツの衣には、小麦粉と卵やパン粉が使われることが多く、このうち味がするのは卵やパン粉が考えられます。基本的に、これらは甘味が強く出ることが多いです。また、揚げ物を揚げる際に用いられる油としては、基本的にはサラダ油であり、この油の味は小麦粉と同様あまりしないことを考えれば、天ぷらやロールカツのような衣だけをプレーンで食べたときは基本的に甘味が感じられると考えられます。特に、洋食の揚げ物の1種であるフリッターの場合は、衣に天ぷらの基本形に加えて卵白で作られているメレンゲを加えているため、甘味が出やすくなります。ただし油の種類にも色々あり、サラダ油の他に胡麻油やオリーブオイルなどを揚げ油として使っている場合もあり、前者を用いた場合は中華風の味に、後者を用いた場合は洋風の味に仕上がることが多いため、衣の味に影響する可能性があります。また、天ぷらの1種である磯辺揚げは、衣に青海苔を混ぜてから揚げるので、この味が中心になると考えられます。ちなみにパンなどに塗るバターや、すき焼きなどに使われている牛脂やラードなども油の仲間です。
衣を味わう方法として天ぷらそば、ささみのチキンカツを頂くのが一手
このように揚げ物では、食材に醤油やみりんなどの下味をつけたり、衣をつけなかったりして揚げる料理である唐揚げや素揚げを除いて、衣の味と食感が味わいやすいとされる天ぷらやカツの衣は基本的に甘味を味わうことができると考えられます。この甘味を直接味わうことができる料理としては、天ぷらの場合は、たぬきうどんや、たぬきそばなどが上げられます。これは普通のかけうどんやかけそばに天ぷらを揚げた残りなどで作られる天カスを入れて作られており、これを入れることで汁が元々の旨味に甘味がボリュームと共に感じられるようになります。また、天ぷらうどんや天ぷらそばも同様であり、こちらの場合は衣の量が前者よりも多いことから衣だけを直接食べやすいのではないかと考えられます。ちなみにレトルトとしてスーパーなどで買うことができる天ぷらそばなどで用いられている天ぷらは小えびなどが入ったかき揚げであることが多いとされています。極端な話では会席料理の1つとして季節の天ぷらとして、そのまま出されることがあり、この衣を剥がして天つゆや塩などをつけずに食べる手法もありますが、マナー的に良くないので避けた方が良いと思います。カツの場合でも同じで、衣を剥がしてストレートに食べる方法は外食で食べるときは避けた方が無難でしょう。でも、一番近い食べ方としてはチキンカツ、とりわけ鶏肉にササミを使ったものを、ウスターソースなどソース類を一切かけずにストレートに食べる方法が考えられます。なぜなら、肉類でも鶏肉自体の味は豚肉や牛肉よりも薄いことが多く、ササミの場合はそれが顕著に表れるからです。ただし、市販されているささみカツには、ささみチーズカツとしてチーズや大葉が入っているものもあるので注意が必要です。また、手作りで豚カツなどを作る場合は、余った衣の材料を混ぜて揚げることで、その味をダイレクトに味わえます。ちなみに卵の色がベースで味も、この甘味が味わえておいしかったです。この応用例としては、衣に玉ねぎやコーンなどの甘味が強い野菜などを混ぜて揚げるとボリュームがしっかりした、かき揚げのような感じでおいしく頂けるのではないかと思います。
衣が味わえる料理は甘味を引き立てているものが多い
天ぷらやカツを使った料理として天丼やカツ丼などがありますが、これらは衣の甘味を活かした味付けであると考えられます。一般的に天丼で使われているタレには、みりんや砂糖が使われているため甘辛い味になることが多く、カツ丼の場合も親子丼のような卵とじであるため、甘味ベースの料理となります。また、トンカツなどにかけるソースは最も辛いウスターソースでも野菜やお酢などで甘味や酸味を加えているため、カツの甘味を引き立てていると考えられます。
これらのように衣が関わる天ぷらやカツを用いた料理は甘いものが多い傾向にあると考えられます。