忘れられない恋を知るあなたへ。映画「ナラタージュ」登場人物&見どころ総まとめ
一生に一度の恋、たとえ結ばれなくても運命だと思える恋を、あなたはしたことがありますか?
時が経ち、離れ離れになったとしても、記憶のカケラに触れるたびに、一瞬にしてその人の匂い、体温、声色、かけがえのない日々に引き戻されてしまうような忘れがたき恋を。
そんな恋を知るあなたのための映画が、2017年10月7日に劇場公開されます。
今回はその映画「ナラタージュ」の登場人物や見どころをご紹介します。
純愛に囚われる!映画「ナラタージュ」あらすじ
大学2年生の春。高校時代に在籍していた演劇部の顧問・葉山(松本潤)から、突然の連絡があり、「後輩の卒業公演を手伝ってくれないか?」と頼まれた泉(有村架純)。葉山は高校時代に友人関係が上手くいかず孤独だった泉を気に掛け、助けてくれた恩師でした。そんな葉山に秘めた想いを抱きながら、二人の間にある秘密を残して卒業。葉山と再会した泉は、かつての仲間と後輩たちとともに、週1回の卒業公演の練習で励むうちに、当時の恋心が蘇り、想いが募っていきます。葉山もまた、泉の存在に助けられ、二人の気持ちは重なりかけますが、葉山には別居中の妻(市川実日子)がいることを発覚。葉山を忘れ、自分を想ってくれる小野(坂口健太郎)と付き合い始める泉でしたが、ある事件をきっかけに二人の距離は再び近づき・・・。
「お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて。」—そんな風に願ってしまうほど、全身全霊で愛した苦しく甘美で色褪せることのない純愛を、映画「世界の中心で愛をさけぶ」「ピンクとグレー」などの行定勲監督が映画化。あなたのパンドラの箱を開けてしまう一作になるやも知れません。
タイトル:「ナラタージュ」
2017年10月7日(土)TOHOシネマズ 新宿ほかにて全国ロードショー
配給:東宝=アスミック・エース
公式サイト: http://www.narratage.com/
「この恋愛小説がすごい」第1位に輝いた原作紹介
本作の原作は、作家・島本理生が20歳の時に執筆・発表した同名小説「ナラタージュ」。
累計発行部数50万部突破の純愛小説で2006年には全国の書店員などが選ぶ「この恋愛小説がすごい」の第1位にも輝いています。20歳の島本だからこそ描けた、瑞々しく真っ直ぐな想いと将来や恋愛に揺れ動く心のコントラストが精妙なバランスを保っている島本の代表作。発売当時から本作の映画化を企画していた行定勲監督により、触れたら壊れそうな、けれど心に熱く焼き付いて離れない珠玉の恋愛映画として、見事に昇華される作品となりました。
新境地に挑む主要キャストたち
工藤泉/有村架純
本作の主人公・工藤泉を演じるのは女優の有村架純。2013年に出演したNHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」でブレイクして以降、映画・ドラマ・舞台にハイペースで出演し続けています。2015年に主演した映画「ビリギャル」「ストロボ・エッジ」は興行収入20億円超えの大ヒットを記録。2011年のデビュー作映画「阪急電車 片道15分の奇跡」でのラブホテルにバスタオル1枚のラブシーンや、2013年のTBS系ドラマ「スターマン・この星の恋」での國村隼とのハードなキスシーンなど、必要とあればどんなシーンでもこなすなど度胸が据わっており、そのようなシーンをいくら重ねても「清純派」のイメージが保たれている稀有な女優です。2017年はNHK朝の連続テレビ小説「ひよっこ」に主演。「阪急電車」で脚本を担当し、デビュー時の有村の演技に惚れ込んだ岡田惠和とNHKが逆指名した形となりました。映画は「3月のライオン 前編/後編」「関ケ原」に出演しています。
有村の演じる泉は、高校時代から現在に至るまでずっと一人の男性・葉山を想い続けている一途な女性です。高校時代に孤独だった自分を救ってくれた葉山に対し、尊敬や感謝の念から恋心へと発展しているので、普通の恋愛感情よりも深く、葉山を理解し、支えたいと願います。しかし、葉山が離婚していないと知り、それでも消えない葉山への想いに苦しみ、想いを断ち切るために小野と付き合い出します。
有村は2016年に主演した映画「夏美のホタル」が自身の勝負作と語っていましたが、本作は有村がこれまで演じてきたいわゆる「素直で良い子」ではない、ドロドロした感情を抱えながら、消えない想いを消すことなく人生を歩んでいく大人の女性を演じており、間違いなく、有村にとって唯一無二の大切な作品=勝負作となることでしょう。
葉山貴司/松本潤
葉山貴司を演じるのは、嵐の松本潤。松本がいわゆる禁断の恋愛ものを演じた映画は、映画「東京タワー Tokyo Tower」「僕は妹に恋をする」がありますが、そのどちらも、それ以外の作品でも、これまでの松本は、自信と色気があるキャラクターを演じることが多かったです。しかし、葉山は、観る人によっては人間の弱さ、狡さ、ほっとけなさで構成されているような男性なので、行定監督は松本の持つ強い目力を少しでも消すために、彼のトレードマークでもある太い眉を前髪で隠し、太めのべっ甲フレームのメガネで、目力を40%くらいに抑えて演じるように、松本にお願いしたそうです。松本自身も最初は自分にオファーが来たことに戸惑い、行定監督に対し、「完全にわかり得る物語ではなく、自分にはあまり振れるものではない。客観的には面白いとも思うが、自分がそれを演じられるかどうかというのは別。」と難色を示したそうです。行定監督自身も、松本の演じる葉山が想像できない中での撮影スタートとなったわけですが、松本は、行定が出す指示を的確に踏襲していき、泉目線の「曖昧で何を考えているのかわからないけど、強烈にほっておけない葉山」を見事に体現して魅せました。
松本が演じている葉山は、過去に自分が妻と母に対しどっちつかずだったため、嫁姑問題が悪化し、妻が姑の在住時に自宅を放火するという事件を起こしています。それ以来、妻は実家へ帰り別居中。葉山は関係修復も離婚もせずに、女性と深く関わらずに生きていましたが、高校生の泉を助けたことで、自身も泉に助けられていることに気付き、またもやどっちつかずな態度で泉を混乱させる罪作りな男性です。葉山が観る人によって色々な顔を持つ男性なので、それぞれの経験によって葉山の印象がまったく違って見えるかも知れません。
小野玲二/坂口健太郎
小野玲二を演じるのは、モデルで俳優の坂口健太郎。俳優としての坂口のキャリアはまだまだこれからですが、実はモデルとしては、雑誌「MEN’S NON-NO」専属モデル時代に20年ぶりに単独表紙を飾ったり、同紙のモデル史上初めて2号連続で表紙を飾るなど、さまざまな記録を打ち立ててきた“塩顔ブーム”の先駆けと言われている存在なのです。
俳優としてメディアに出だした頃の坂口のイメージは、「器用に何でもこなす現代っ子」だったのですが、映画の本数を重ねても、きちんとどれもモノにしていることや映画「64-ロクヨン‐ 前編/後編」のようなベテラン俳優がひしめく中にいても、存在感を発揮できているのを観て、もしかしたら5年後10年後にすごい俳優になるのではないかと思い始めました。同じ事務所に小栗旬や綾野剛など日本映画界をけん引する中堅実力派俳優たちが大勢いますしね。そんな坂口の強みは無色透明で何色にも染まれることだと言われています。
2017年7月クールで放送中のドラマ「ごめん、愛してる」ではこれまでの現代っ子とは違う過保護に育てられ甘え上手な若者で新境地を見せている坂口が、第3の主人公・小野玲二をどう演じるのか、今から期待が高まります。
坂口が演じている小野は、一見理性的で穏やかなモテ男なのですが、深く接してみると感情の起伏が激しい面が見えてきます。泉が葉山のことを好きと知ってなお、泉に告白をし、一度は振られますが、泉が葉山を断ち切ろうとする過程で、泉と付き合い始めます。しかし、付き合い始めてからも一向に葉山を忘れない泉に苛立ちや焦りから強引な手段を取るようになり・・・。葉山と泉が感情を表に見せない静のキャラクターなのだとしたら、小野は動のキャラクターで、穏やかながらもきちんと自分の気持ちを伝え、距離を縮めていこうとします。これまで坂口が演じてきた役柄の中でも、ダントツで感情の起伏が激しく恋愛感情に呑み込まれる役なので、坂口にとっても、本作がひとつのターニングポイントになるのではないかと注目を集めています。
さらに、大人になった泉の同僚役を瀬戸康史、葉山の妻役に市川実日子が務め、本作に華を添えます。いびつな人間らしさこそが美しく愛おしい、行定監督が描く恋愛模様をたっぷり堪能してください。
あなたの恋愛経験を暴く映画「ナラタージュ」見どころ
島本作品、初めての映画化
「嬉しさ」「切なさ」「喜び」「悲しみ」「ほろ苦さ」—そんな恋愛感情を表わす言葉の隙間に零れ落ちてしまった、言葉では表現できない機微な感情を描いた映画「ナラタージュ」。言葉よりも先に体が動いてしまう、想いよりも先に涙が溢れてしまう。そんな台詞や実写で表現しにくい繊細な島本理生ワールドにどう挑むか?島本作品は、芥川賞にも4度候補となっており、とっくに実写化されていてもおかしくないのに、現在まで誰も実写化してこなかったのは、上記のような世界観を表現できる俳優や監督がいなかったにほかなりません。
原作が発売した当初から実写化のタイミングを計っていたという行定監督。本作を的確に表現できる俳優を探し続け、10年目にしてやっと、松本と有村という本作をともに挑むにふさわしい俳優に出会えたと語っています。島本と同世代の作家・綿谷りさ原作の映画「勝手にふるえてろ」も2017年12月に劇場公開が決まっており、本作が成功すれば、注目の若手作家たちの作品の映画化が一気に進むかも知れません。
あなたの恋愛偏差値がわかっちゃうかも!?
本作は不倫ものだけれど、観た人それぞれの恋愛体験にフィードバックすることができる共感性がとても高い作品です。感情を理性でコントロールできない、まさに心の奥底から相手を求める葉山と泉の関係性は、互いに引きずり合うような生よりも死や破壊に近い恋愛感情です。有村も松本も憑依型の俳優ではないのですが、有村は「泉でいることは苦しかった。」と語り、松本もまた、そんな有村の辛い感情に引っ張られることが多かったとインタビューで語っています。また、予告編でも公開されている浴室でのラブシーンでは、松本は「(本番では)有村さんのことしか見ていなかったので、どう動いたかも覚えていないです。」と語っています。有村や松本だけでなく、坂口も、表情の奥底にある感情を読み取るような、思わず零れてしまったような、これまでの彼らのキャリアでは見せたことのない生々しい、人間臭い演技を披露しています。交わす抱擁、口づけのすべてが嬉しさよりも悲しみの方が大きい、そんな恋愛をしたことがある方は号泣必至。観た人の恋愛経験がモロに反映されて、色々な場面が心に突き刺さる、弱くて強情な大人たちの苦くて濃密な大人のためのラブストーリーです。
主題歌は覆面アーティストadieuの「ナラタージュ」
本作の主題歌を担当するのは覆面アーティストのadieu。adieuはフランス語で「永遠の別れ」という意味です。行定監督自身も会ったことがないので、正体がわからないそうです(笑)本作のための書き下ろし曲で、作詞・作曲を担当したのは、2016年の映画「君の名は。」以来、映画監督の間で引っ張りだこのRADWIMPSの野田洋次郎。柔らかく澄んだ歌声と雨の後のような優しくて切ない歌詞にエンドロールで涙が溢れ出す人が続出しそうな予感が・・・。
本作は、原作とは違うオリジナルラストで、原作者の島本も「原作通りにやるとちょっと重いかなと思っていたので、良かったと思う。」と太鼓判を押しています。文学的な香りがする秋の夜長にピッタリな、長く深い余韻に浸れること間違いなしの映画「ナラタージュ」。2017年10月7日劇場公開です。
(文 / Yuri.O)