韓国発!全く新しい感涙ゾンビ映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」見どころ総まとめ
2016年に韓国で劇場公開されるや否や、本国のみならず世界中から絶賛の嵐を受けている映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」。
2017年9月に日本でも公開され、公開から1ヶ月を経っても連日満員御礼、当日チケットはほぼ完売するなど、感染拡大中の映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」のキャスト、見どころなどをご紹介します。
韓国の本気のエンターテインメント!映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」あらすじ
ソウル発プサン行きの高速鉄道KTXの車内で突如起こったパンデミック。疾走する密室内で次々と感染し、凶暴化する感染者たち。娘の誕生日にプサンに住む母親に会いに行くため、偶然車内に乗り合わせた父(コン・ユ)と幼い娘(キム・スアン)、妊娠中の妻(チョン・ユミ)とその夫(マ・ドンソク)、高校生の恋人同士・・・KTX内だけでなく、韓国の都市も次々と陥落する中、果たして彼らは無事に終着駅にたどり着くことができるのか!?世界156カ国からオファー殺到!極限状況下の人間模様が呼び起こす、破格の興奮と感動に乗り遅れるな!アメリカでのリメイクも決まり、世界規模で話題沸騰の超ド級ノンストップ・サバイバル・アクション大作がついに日本上陸です。
タイトル:「新感染 ファイナル・エクスプレス」
2017年9月1日(金)新宿ピカデリーほかにて全国ロードショー
配給:ツイン
公式サイト: http://shin-kansen.com/
アニメーション界の若手実力派監督ヨン・サンホが描く実写超大作
本作のメガホンをとったのは、アニメーション映画出身の映画監督ヨン・サンホ。これまでにアニメーション映画を3本、そして今回実写作品に初めて挑み、世界的大ヒットを樹立した2017年現在39歳の気鋭の若手実力派映画監督です。
これまでに手掛けた作品は、2013年の映画「豚の王」、2017年9月30日公開の映画「ソウル・ステーション パンデミック」、10月21日公開の映画「我は神なり」で、そのすべてがアニメーション作品です。貧困層のスクール・カースト問題や新興宗教を題材にした人間を徹底したリアリズム志向で描いているのが特徴で、そのルーツはヨン・サンホが日本の漫画で最もファンだと語る古谷実作品。ヨン・サンホが最もアニメ化したい作品が古谷の「シガテラ」だそうで、他にも「ヒミズ」など古谷作品を読んだことがある方なら、ヨン・サンホ以上に振り切った設定や徹底的に登場人物に厳しい社会の描き方など、ヨン・サンホ作品との共通点に納得がいくはずです。ヨン・サンホは「豚の王」が公開された頃から実写を撮るべきだと言われていましたが、本人にその気はありませんでした。しかし、本作の前日譚となる「ソウル・ステーション」の企画が上がった段階で映画会社から実写の依頼があり、初めての実写作品に挑むことを決意。ヨン・サンホいわく、今はCGなど技術が発達しているので、自分の思い描いた絵コンテを実写にすることは難しくなかったそうで、リアルな人間模様を描きながらも、ゾンビというファンタジーを絶妙なバランスで映像化することに成功しました。待望の次回作では、「ソウル・ステーション」でヒロインの声を務め、本作で最初の感染者を演じたシム・ウンギョン(映画「あやしい彼女」の主演女優)と再びタッグを組み、実写映画を撮ることが決まっています。韓国では、アニメーション映画を作り上映することがとても難しい風潮がありますが、アニメでも実写でも、これからも世界中を驚かせて欲しいですね。
韓国映画界の実力派からアイドルまでバラエティーに富んだキャストたち
仕事で娘との時間が取れない父親ソグ/コン・ユ
ソグを演じているのは、2017年現在38歳のコン・ユ。日本では、韓流ブーム真っただ中の2008年(韓国では2007年)にドラマ「コーヒープリンス1号店」で御曹司を演じ、大ブレイク。その後、2012年の映画「トガニ 幼き眼の告発」で聾学校の教師を演じ、イケメン・アイドル路線から見事に脱却してみせました。2017年はソン・ガンホ、イ・ビョンホンと競演し、韓国観客動員数750万人突破の大ヒットを記録した映画「密偵」、2018年は濃密なラブシーンが話題となった純愛映画「男と女」と、タイプの違う2つの作品が決まっています。
コン・ユが演じるソグは、ワーカホリックで家庭を顧みないファンド・マネージャー。それが原因か妻とは別居中で、妻はソウルで暮らしています。ソグは離婚して一人娘のスアンを引き取るつもりでいますが、娘のことは実母に任せる気で子育てにはノータッチ状態です。スアンの誕生日プレゼントに「ソウルにいるママに会いたい。」という願いを叶えるため、KTXに乗車し、感染者と戦うことに。そこでも自分と娘さえ助かれば良いという自己中ぶりを発揮しますが、娘の必死の訴えや生存者と関わる中でソグの考えにも変化が訪れます。極限状態になって初めて娘とじっくり向き合う時間を持ち、父親として目覚めていきます。
ソグの幼い一人娘スアン/キム・スアン
スアンを演じているのは、キム・スアン。これまでテレビ・映画など20作品以上に出演している人気子役です。映画「明日へ」「コインロッカーの女」「造られた殺人」など日本で公開された作品も多いです。本作のメインテーマであるソグの父性を引き出すという点において、キム・スアンの名演はパーフェクト。スアンの善良な心と澄んだ瞳で見つめられ、ソグが言葉に窮し、クライマックスでのスアンの叫びにはソグ同様、観客の心も打ち砕かれ、号泣必至です。
キム・スアンが演じているスアンは、両親の別居、父親の無関心に心を痛める少女。KTXでパンデミックが起きてからは、老人に席を譲り、大人たちが争うのを見て涙するなど、極限状態で人間の本性が出る中で、善良の象徴として描かれています。
妊娠中の妻ソンギョン/チョン・ユミ
ソンギョンを演じているのは、チョン・ユミ。コン・ユとは2012年の映画「トガニ 幼き瞳の告発」以来の再タッグとなります。映画を中心に活躍している女優で「トガニ」の公開時はまだ可愛らしい感じの女優でしたが、本作ではヒロインにぴったりな美しく可憐な女優へと成長を遂げています。日本では2012年の映画「教授とわたし、そして映画」、2014年の映画「ソニはご機嫌ななめ」などが有名です。
チョン・ユミが演じているソンギョンは、妊娠中に夫とともにKTXに乗車し、パンデミックに巻き込まれます。正義感、母性本能が強く、逃げ遅れたスアンや老婆などを助けながらソグたちと行動を共にします。本作では、母性の象徴のような存在でヒロインです。
ソンギョンの夫サンファ/マ・ドンソク
サンファを演じているのは、マ・ドンソク。時代劇からヤクザ、コメディーまで幅広い役柄を演じることができる実力派俳優です。日本公開されている作品も10作以上あり、2016年の映画「殺されたミンジュ」などに出演しています。本作では、ドンソクいわく「コメディー担当。」でアドリブもバンバン飛ばし、いくつかは本編でも使われています。
マ・ドンソクが演じているサンファは、ソンギョンの夫で常に妊娠中の妻を気遣い、自己中なソグにより、命の危機に晒されようとも、スアンに優しく接し、ソグに父親たるものがどんな存在か身をもって示していきます。極限状態でも人を気遣い、周囲を救おうとするサンファ夫婦やスアンにより、ソグも父親として、人間として、これまでの行いを悔い改めるようになります。個人的には、サンファはコメディー担当などではなく、漢の中の漢です!プロレスラーとかでもなく普通の男性なのに、愛する妻のためならゾンビだらけの車両に突っ込んでいき、素手でゾンビを殴りぶん投げまくります。見た目は「美女と野獣」のサンファとソンギョンですが、ソンギョンが惚れるのもわかる超男気溢れる男性です。
他にも、高校生カップルをアイドルグループ・ワンダーガールズのメンバー、アン・ソヒと映画「オクジャ/okja」などのチェ・ウシク、ソグたちを何度も窮地に陥れるヨンソクを名バイプレイヤーのキム・ウィソンが演じています。
世界を席巻!世界156カ国からオファー殺到!した本作のみどころ
世界中で絶賛の嵐!世界156カ国からオファー殺到!
本作はヨン・サンホ監督の初めての実写長編映画ながら、本国韓国で観客動員数1156万人を突破し、2016年の韓国興行収入No.1の大ヒットを記録しました。その勢いは国内に止まらず、カナダのファンタジア国際映画祭で最優秀作品賞受賞、スペインのシッチェス・カタロニア国際映画祭で監督賞・視覚効果賞の2冠を達成したことを皮切りに、全世界16の映画祭で上映。第69回カンヌ国際映画祭ミッドナイト・スクリーニング部門にも特別招待され、世界中で絶賛の嵐を巻き起こしています。スリラー作家のスティーヴン・キングは「「ウォーキング・デッド」よりドキドキだ。」、ギルレモ・デル・トロ監督は「完璧!」、樋口真嗣監督は「超ヤバい!」と著名人たちをも虜にし、2017年9月現在の全世界興行収入は58億円を突破!すでにアメリカでのリメイクも決まっており、近年では、韓国映画として世界で最も売れた映画になるのではないでしょうか。日本でも単館上映ながら、連日満員御礼状態が続いています。
韓国のタブーを打ち破ったゾンビ映画
実は本作が公開されるまで、韓国では「ゾンビ」という単語は映画を宣伝する上では禁止用語扱いでした。それはなぜか?韓国では、漫画などではゾンビものも親しまれていますが、映画の素材としてゾンビを扱い、これまでヒットした作品がほとんどありませんでした。そのため、本作の宣伝時にも「ゾンビ」という単語は使われておらず、「感染者」と呼んでいます。しかし、本作がスマッシュヒットしたことで、今、韓国は空前のゾンビブーム。子どもたちの間では、「新感染」ごっこや鬼ごっこの鬼をゾンビとした遊びが流行っているそうです。本作でのゾンビの見せ方も多岐にわたっており、映画「ワールド・ウォー・Z」のようなゾンビタワー、KTXに引きずられ連なるゾンビ川、ゾンビでぎゅう詰めのゾンビ壁などバラエティーに富み、飽きさせません。超高速で走るゾンビが暗闇で動きが鈍るなどの設定も、主人公たちがゾンビと戦う上で、面白い設定となっています。
ゾンビ版泣ける!「そして父になる」
本作は災害ブロックバスターのパニック・ムービーであるとともに、立場や年齢が違う普通の人々が手を取り合い、必死に生き抜こうとする普遍的な物語です。その中でもメインテーマとして据えられているのが、父ソグと娘スアンの物語。自己中心的で仕事で家庭を顧みなかったソグは、極限状態に陥って初めて、幼い一人娘のスアンとじっくり向き合う時間を持ちます。そこで初めて、スアンの周囲を気遣う優しい性格やスアンが抱えていた自身への想いを知ります。同じく妊娠中の妻を持ち、これから父親になるサンファとも、初めは対立し合っていましたが、行動をともにするうちに、サンファから父親とはどうあるべきか?と身をもって学んでいき、初めてスアンの小さな手を握り、深い父性愛が芽生え始めます。しかし、そこは韓国映画!予想を遥かに上回る無慈悲な展開が登場人物たちを襲います。メインキャラクターたちが次々と退場していく中、生き残った高校生カップルは?生き別れになってしまった老姉妹は?ソグとサンファの友情は?そして、果たしてソグはソウルまで無事にスアンを連れて行くことができるのでしょうか?無情に無情を次ぐ壮絶な展開に溢れる涙が止まらない!号泣必至の“感涙系”ゾンビ映画の誕生です!
極限状態のスリルと迫力に乗り遅れるな!
本作は、映画「ポセイドン・アドベンチャー」や映画「スノーピアサー」のような密室サバイバル・アクション・ムービー。韓国・ソウルからプサンへ向かう高速鉄道KTXの車内で突如発生したパンデミックから逃れるべく、KTX内、途中の駅構内、線路と縦横無尽に逃げまくります。本作の恐ろしいところは、ゾンビより人間の方が圧倒的に怖いんですね。自分と娘さえ助かれば良いと妊婦や老人の目の前でドアを閉めてしまう主人公、感染を免れ逃げてきた主人公たちを絶対に安全な車両に入れるなとドアをネクタイで縛りつけ、大人たちが全員で攻防を広げ、そのあまりに無慈悲な光景に泣き出す子ども、キム・ウィソン演じるヒール役の、自分を救うためにゾンビの中に助けにきてくれた人を身代わりに突き飛ばす悪行ぶり。しかし、それもこれも助かって大切な人に再び会いたいという想いから来るものとして描かれ、実際、このような極限状態に陥ったら、人間はこうなるのだろうなと、ハリウッド映画であるような思いやりの欠片も一気に吹き飛び、人間の自己中ぶりに映画館を出た後、電車に乗って帰るのが怖かったという観客が続出しています。
しかしそんな中だからこそ、愛する家族を救おうとゾンビだらけの車両にバットのみで乗り込んでいくソグやサンファがまた格好良いんです!韓国は銃社会ではないので、対ゾンビ戦でもバットと素手でガチの殴り合いのシーンが続き、生々しい痛みと迫力が観客に心に響きます。そして、中盤以降の畳みかけがまた凄い!!KTXは動かなくなっちゃうわ、火を噴いた電車は主人公たちに突っ込んでくるわ、最後まで息つく暇ないノンストップ過ぎて心臓が痛いくらいです。今回の撮影で、実寸のKTXと同じ電車サイズの車両を用意したことや車両に巨大なLEDリアプロジェクションを設置し、実際に電車が疾走しているかのような空間で俳優たちが演技をできるようにしたこと、廃線路を使った大掛かりな撮影など、日本には到底真似できないお金のかけ方が、きちんと作品に結びついているところもポイントだと思います。
朝鮮戦争時に、北朝鮮軍の奇襲により、あっという間に陥落したソウルから韓国軍がプサンへ南下していったルートを辿っているのも、芸が深いです。感動も興奮も迫力も号泣も「ここです!今です!」という作り手側が用意する最大級のタイミングに、今回ばかりは乗せられて楽しんじゃいましょう!
前日譚となる映画「ソウル・ステーション パンデミック」
本作の前日譚となるヨン・サンホの最新作アニメーション映画「ソウル・ステーション パンデミックが2017年9月30日に劇場公開されます。これまで同監督の映画「豚の王」が日本公開されていますが、韓国のアニメーションが映画祭を除いて日本で劇場公開されることは、これまでほとんどありませんでした。10月21日には映画「我は神なり」も日本公開が決まっており、これはまさに快挙と言って良いくらい凄いことなのです。「ソウル・ステーション」は、本作でKTXに錯乱状態で乗って来た最初の感染者の物語で、ホームレスや元風俗嬢など韓国の貧困層に暮らす人々に焦点を当てた物語です。
本作はもともと、この「ソウル・ステーション」を実写化してみないか?という話がヨン・サンホのもとへ舞い込み、「それならば、同じ話を実写にしても面白くないので、新たな物語を。」と実写に初挑戦することになったといういきさつがあります。その「ソウル・ステーション」も、アジア・パシフィック・スクリーン・アワード最優秀長編アニメ賞を受賞、ブリュッセル・ファンタスティック国際映画祭シルバークロウ賞を受賞するなど、世界から大きく注目されています。これからは、映画監督ヨン・サンホも、彼のアニメーションも実写映画もアジアの動きを知る上で押さえておきたいコンテンツのひとつですね。
2017年は、本作の他にも映画「哭声/コクソン」「お嬢さん」など、韓国映画に恵まれている年と言えます。どれも単館系ながら、公開前から話題で、口コミで拡がり、公開終了まで連日満席で入れないほどです。本作が韓国で公開された2016年は、主演のコン・ユにとっても当たり年で、本作に続き公開された映画「密偵」も同年の観客動員数3位となるなど、俳優として確実にステップアップした年となりました。
2016年の映画「アイアムアヒーロー」そして、2017年の映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」が、アジアン・ゾンビの起爆剤となって欲しいとインタビューで語っていたヨン・サンホ監督。起爆剤どころか、海を越えて大ブーム間違いなしの逸作です!
(文 / Yuri.O)