朝鮮半島情勢は第二次世界大戦前夜に似ている?

朝鮮半島の緊張が続いています。今年(2017年)のニュースは北朝鮮で持ちきりだったといっても過言ではありません。2017年9月、北朝鮮は6回目となる核実験を強行。また大陸間弾道ミサイル(ICBM)をはじめとするミサイル発射実験を次々と行い、日本の上空を通過したものもありました。今年1月に就任したアメリカのトランプ大統領は激しい言葉で北朝鮮を非難し、軍事行動を示唆する発言もしており、朝鮮半島はかつてないほどの緊張に包まれています。北朝鮮について考えるにあたり、少し視点を変えて、過去の歴史と重ね合わせながら考えてみたいと思います。歴史をさかのぼると、現在の朝鮮半島の状況は、第二次世界大戦前夜のヨーロッパの状況によく似ています。少し見ていきましょう。

1.ヴェルサイユ条約はドイツを徹底的にいじめる条約

1919年、フランスのパリで第一次世界大戦の講和会議が開催され、講話条約としてヴェルサイユ条約が締結されました。ヴェルサイユ条約は学校などで一度は聞いたことがあると思います。少し詳しく説明すると、この条約は、第一世界大戦の勝利国であるイギリスやフランスなどの国と、敗戦国であるドイツとの間で結ばれた条約です。

この条約を一言でいうと、ドイツを徹底的にいじめることを目的としたものです。ドイツは所有していた海外領土(植民地)はあらかた没収され、徴兵制の禁止など軍隊を持つことも制限されました。さらに、1320億マルクという天文学的な賠償金を課せられました。ドイツはこの賠償金を92年間払い続け、なんと2010年に返済が完了しました。第一次世界大戦は「総力戦」と呼ばれ、戦争に勝ったイギリスやフランスも相当なダメージを受けました。その元を取り返すためドイツから取れるだけ取ろうと、自分たちの利益のみを追求したためです。

いくら戦争に負けたとはいえ、ドイツ人のプライドは打ち砕かれました。さらに1929年には世界恐慌(これも聞いたことがあると思います)による経済的打撃で、ドイツはどん底まで追い込まれました。自信も金も失った状況の中、天才的な演説によって国民の人気を集め、あっという間に政権を獲得したのが、あの有名なアドルフ・ヒトラーです。

2.イギリスとフランスの対応がヒトラーを育てた

1934年に総統に就任して独裁者になったヒトラーは、ヴェルサイユ条約で禁止された徴兵制を復活させ、ドイツ軍の再軍備を宣言します(再軍備宣言)。ヴェルサイユ条約はヒトラーによって一方的に破棄され、第一次世界大戦後に築かれたヴェルサイユ体制は崩壊しました。ここで注目したいのは、イギリスとフランスの対応です。一言でいうとイギリスとフランスは、暴走するヒトラーに対して何もしませんでした。特にドイツと国境を接するフランスは、ヒトラーによる再軍備宣言後、フランスの国境付近に軍隊を配備(ラインラント進駐)されたにも関わらず、状況を静観するばかりでした。こうしたヒトラーに対する甘い対応を「宥和(ゆうわ)政策」といいます。

1938年3月、暴走を止めないヒトラーは隣国であるオーストリアを併合、また現在のチェコ(昔はチェコスロヴァキアと呼ばれました)にあるズデーテン地方もドイツ領にしようとしました。これには、さすがにイギリスやフランスも重い腰を上げ、同年9月ドイツのミュンヘンで、イギリス・フランス両首脳、そしてヒトラーを交えて会談が行われました(ミュンヘン会談)。イギリスとフランスはここでも宥和政策を貫きます。ヒトラーはこれ以上の領土拡大はしないと約束。この言葉を聞いたイギリス・フランス両首脳は安堵し、今までドイツが獲得した領土はドイツ領であることを認め、合意書にサインしました。意気揚々と母国に帰るイギリス・フランス両首脳を見送ったヒトラーは、さきほど交わした合意書を破り捨て、今後さらに領土を拡大すると部下に言い切ったそうです。

ミュンヘン会談以降の歴史はもうお分かりだと思います。1939年9月1日、ドイツはポーランドに軍事侵攻。世界史上最大の悲劇のひとつである第二次世界大戦が始まってしまいます。この悲劇の原因は、ヒトラーを野放しにしたイギリス・フランスの「宥和政策」であることは明らかです。

3.朝鮮半島情勢は第二次世界大戦の二の舞?

第一次世界大戦後から第二次世界大戦開戦までに流れをドイツ中心に見てきました。この歴史の流れを今の朝鮮半島情勢に照らし合わせると、このように考えることができます。

北朝鮮は1990年代から積極的に核開発を続け、2003年1月には核兵器保有を禁止することを目的とする核拡散防止条約(NPT)からの脱退を表明しました。これを踏まえて2003年8月、日本も含む6者協議(日本以外ではアメリカ、中国、ロシア、韓国、北朝鮮)が行われました。2005年9月には核放棄を盛り込んだ共同声明が採択され、北朝鮮の非核化実現に道筋が見えたと思われました。しかし、その後の北朝鮮の対応はもうお分かりだと思います。翌年の2006年10月、北朝鮮は初の核実験を強行。2007年2月の協議で再び核放棄を約束しますが、2009年5月に2回目の核実験を実施。現在(2017年12月21日現在)までに計6回の核実験を行いました。

NPTを脱退し6者協議による約束も守らず核開発を進め、ミサイルを飛ばし国際社会を挑発し続ける北朝鮮の行動は、ヴェルサイユ条約を一方的に破棄して再軍備を宣言し、ミュンヘン会談で結んだ協定などさらさら守る気がなく、ひたすら領土拡大を進めたヒトラーと状況が似ています。6者協議による約束を反故され、表面では厳しい言葉で北朝鮮を非難しときながら、実質的には何もしないアメリカなどの周辺国はかつての宥和政策を採用したイギリスやフランスとそっくりです。アメリカや日本は経済制裁によって圧力を加えていることを強調しますが、北朝鮮は相変わらずミサイル開発や核実験を続けています。この事実は北朝鮮にはまだ十分な資金(経済制裁から逃れている資金源)があり、経済制裁は成果を上げていないことを意味します。どの政治家からも「圧力を強化する」という言葉は出ても「経済制裁が効いている」とは聞いたことがありません。

第二次世界大戦が起こるまでの歴史を踏まえると、アメリカをはじめとする周辺国の対応が今後も変わらなければ、朝鮮半島には悲劇的な結末がもたらされることが予想されます。そうなる前に、重大な決断をしなければいけない時期にさしかかっているのではないでしょうか。2018年は非常に重要な年になるでしょう。

「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」(カール・マルクス)