艦これチュートリアル超番外編 ~艦これ2期?~
ブラウザゲームというとプラットフォーマーからも半ば「使い捨て」のごとく扱われ、どんどん生まれては消えるタイトルだらけの状況と言っていいでしょう。
そんな中、艦これは5年近く生き延びているブラウザゲームとしては超がつきそうなレベルの長命タイトルになりました。
Adobe FLASHで書かれたサイズもさほど大きくはないプログラム一つでよくぞここまでの機能を盛り込み、かつ、ここまで機能の拡充をおこなってきたものだとそちらの観点からは素直に感心するほかありません。
決してプログラムとして大きな規模ではないのに、シミュレーションウォーゲームとしてかなり優れた内容を実現できている、という所は評価に値するゲームでしょう。
そんな艦これにも遂に「2期」のお話が出始めました。
このあたりにはWebのトレンドの変化など、ゲーム以外の部分も大きくかんできています。
今回はチュートリアルの内容から少し離れ、この辺りのブラウザゲーム自体の行く先にも絡む、ちょっと重たいかもしれない内容をまとめてみます。
Adobe FLASHとブラウザゲーム
かなり以前から動きのあるWebサイトを作るための基盤技術の一つとして広く使われてきたAdobe社のFLASHですが、これが遂に2020年末で新規開発を終了、サポートも同時に終わることが発表されました。
FLASHの中では基本図形をビットマップだけでなく、パワーポイントなどが扱うような「ベクトルデータ」で取り扱うことも出来るようになっています。
このためプログラムなども組み込んだグラフィクスを含む動きのあるWebサイトを、非常に軽いデータ量で作ることが出来ます。
今はネット環境が非常に良くなって、ほとんど誰もが既に死語かもしれないブロードバンド回線の恩恵にあずかれます。多少データ量の大きなWebページでも表示に時間がかかることはまれです。
ですが、以前のナローバンド状態の環境にはFLASHの軽量さと動きのあるページを作りやすい機能が非常に重宝されました。
また、今のFLASHでは内蔵のスクリプト言語により一般的なプログラミング言語に出来ることは、ほとんど全てFLASH内部で動かすことが出来るようになっています。
この辺りの要素がブラウザ上で動作する「ブラウザゲーム」にも重宝されることになりました。
今はカジュアルゲームもスマートフォンのネイティブアプリが主流となり、ブラウザゲームというジャンル自体が下火になってきていますが、それでも残存するブラウザゲームの多くがFLASHを基盤として利用しています。
特にDMMのゲームはFLASHへの依存度が非常に高くなっているはずで、艦これもその一つです。
FLASHからHTML5へ
単に動きのあるWebサイトを作るだけではなく、さまざまなアプリケーションの基盤としても活用されるようになっているFLASHですが、Web環境の変化により2020年末を持ってサポートが終了することがAdobe社から発表されています。
これはFLASHに変わる新たな動的なWebサイトを作る技術としても注目される「HTML5」がしっかりと規格化され、機能面でも十分に充実が図られてきたことがベースにあります。
FLASHはWindowsとかMacOSといったOSの枠を超えて「クロスプラットフォーム」で動作可能な点も重宝された理由の一つですが、Webの標準技術であるHTML5もOSの枠に捕らわれることがありません。
それぞれのOSで動くブラウザさえきちんとHTML5の各機能をきちんとサポートしていれば、どんなOS上でも全く同じ動作を期待できます。
もちろんパソコン用のOSだけではなく、スマートフォンのOSでも、です。
スマートフォンが出始めた頃は明らかにスマートフォンの方がパソコンよりも性能が劣りましたから、スマートフォン用のブラウザはパソコン用のブラウザのサブセット的な位置づけでした。
ですが今のスマートフォンは非常に高性能で、フル機能版のブラウザも問題なく動かせる性能があります。
今はFLASHは、AndroidOSでもiOSでも正式に動作させることは出来なくなっていますから、真のクロスプラットフォーム用の基盤としてはHTML5の方がより適している、と言える状況になってもいるのです。
艦これシステム自体の限界
FLASHだけで作り込んでいく限界も、そろそろ艦これシステム側にも出てきているのかもしれません。
また艦これのシステムの仕様面でもそろそろ限界が見え始めているかもしれません。
色々な面でのゲームシステム上の「スケール」が今の艦これはかなり小さめで、そのあたりがそろそろ厳しくなってきている感触があちこちに出始めています。
味方も敵も一定以上の強さを実現しにくい作りとなっていて、たとえば砲撃戦での大和型の突き抜けた強さを実感しにくい、といったデメリットが出てきているように思います。
こういった厳しい制約のおかげで、さまざまなゲーム要素、味方・敵の強さの「インフレ」は起こさずに済んでいますが、その分が逆にゲームのダイナミックレンジの狭さ、メリハリのなさに繋がってしまっているようにも見えます。
難易度を上げる目的でも複雑怪奇な「ギミック」に頼らざるを得なくなっているのも、この辺りのゲームのスケールの限界が悪影響を及ぼし始めているからなのかもしれません。
また、ゲーム本体のサイズをコンパクトにまとめる目的だと思いますが、艦これで使われているCGは非常に圧縮率が高くてJPEGの圧縮ノイズだらけ。お世辞にもキレイな画面とは言えません。
音声の方も同じ状況ですね。かなり圧縮で失われた情報のあるビットレートの低い、音質の悪い音声になってしまっています。
そのあたりもFLASHをプラットフォームに使う限界点が来ているのかもしれません。
艦これ運営よりもDMMが大慌て?
FLASHサポート打ち切りのニュースで大慌てをしたのは、艦これ運営よりもむしろプラットフォーマーであるDMMのほうかもしれません。
DMMは今どきのゲームのプラットフォーマーとしては例外的に珍しく、ブラウザゲーム主体の会社です。そしてDMMの多くのタイトルはFLASHで作られています。艦これのような稼ぎ頭であるタイトルも含め。
ですので、今頃はFLASHに変わるブラウザゲームの開発用フレームワークを探しているか、大慌てで自主開発に乗り出しているのではないかと思います。
HTML5も非常に高機能でほとんど全て何でも出来るはずですが、FLASHとは異なり素の状態だと本当にゼロから開発を行なわなくてはいけないようなスッピンの環境です。
一応、既に各種のWebアプリケーション開発向けのフレームワークは世に出ていますが、どれも恐らくブラウザゲーム向けとは言いにくい機能になっていると思います。
ですので、既存のフレームワークにさまざまなカスタマイズを施すことでブラウザゲーム向けとした新しいフレームワークをDMM側がなんとかするのではないか、と、今はちょっと予想しています。
それでも恐らくFLASH版とはまるで違うシステム構成を取らないといけなくなると思われますので、ここまでシステムが大きくなっている艦これでは単純なコンバート作業だけでも非常に大きな工数が必要になることが予想されますね。
艦これ2期に期待したいこと
FLASH終了はシステムを一新するいいチャンスでもある訳ですので、せっかくならばこの機をうまく利用してもらいたい部分もあります。
例えば今の艦これシステムでは、艦の成長があまり海域攻略の結果に影響を及ぼしません。
ほとんどの海域の戦闘の解決はほとんど全て乱数の出目に依存していて、その部分が艦これを遊ぶ上での「理不尽」感に繋がっていると思われます。
後発のゲームではそのあたりを非常に良く研究していて、ゲームを遊ぶ上での理不尽さを大幅に削ったシステムを実現。実際に艦これからもユーザーがそちらのゲーム(アズールレーンなど)にかなり流出しているとの噂も聞きます。
そのあたりは現状よりももう少し乱数への依存度を下げたシステムを期待したいところです。
あとは、現状のシステムからの最低限でも艦や司令部のステータスの引き継ぎですね。
数年以上継続して遊んできた提督ならば、司令部の経験値も艦の経験値も艦種の確保にも非常に大きな時間がかかっているはずです。既存ユーザーのことを考えるならば、できうる限り既存のデータの引き継ぎは実現して欲しいところです。
その上で各種システムの改善も期待したいところですが、前述の通りFLASHからHTML5への単純コンバートだけでも多大な工数を要することになると思いますので、システム改善の方はちょっと期待薄かもしれません。
ただ、この機会を逃すとシステムを大きく変えるチャンスはなくなると思います。
開発のベースとなるプラットフォームの終了は本来は大ピンチかもしれない大変な問題ですが、あちこちで言われる通り、ピンチをチャンスにうまく変えてほしいものです。