平成30年初場所を振り返ると

スポーツ報知 大相撲ジャーナル2018年3月号 | |本 | 通販 | Amazon

先場所にあたる平成30年初場所は、伊勢ヶ濱部屋所属だった第70代横綱日馬富士関の暴行問題などの不祥事が尾を引いた上、1年以上行司の最高位にあたる木村庄之助がいない中、宮城野部屋所属の立行司である第40代式守伊之助が終日出場停止になったことで、高田川部屋所属の三役行司の1人である第11代式守勘太夫が筆頭になるなど異例の中での開催となりました。最終的に、幕内最高優勝が春日野部屋所属の栃ノ心関で初優勝を入門からほぼ12年かけて果たして幕を下ろしました。

今回は、そのような初場所に関して幕内と十両の結果を中心に4つのトピックに分けて振り返る形で紹介したいと思います。

6年ぶりの平幕優勝を果たした栃ノ心関の活躍ぶり

まず、幕内の土俵では先述した通り栃ノ心関が、井筒部屋所属の第71代横綱鶴竜関に敗れただけで14勝の好成績を収めて初優勝を果たしました。番付は西前頭3枚目なので、6年前の夏場所で現在、友綱部屋の師匠を務めている元関脇旭天鵬関が前頭7枚目の番付で12勝3敗の成績で優勝して以来の平幕優勝となりました。

栃ノ心関が優勝できた要因の1つとしては、自身の強みである右四つに組んでから左上手を取って寄り切るなどの内容を15日間通じて発揮することができたことが挙げられます。ちなみに、この内容を評価されたことで、2度目の技能賞も獲得でき、田子ノ浦部屋所属の高安関と境川部屋所属の豪栄道関の両大関から白星を取ったことなどから殊勲賞も獲得しています。

休場力士の多さが目立ち、かつての実力者が息を吹き返した幕内の土俵

一方で、初場所も半年前から話題になっている力士の大量休場の傾向が続いてしまった場所となってしまいました。共に伊勢ヶ濱部屋所属の安美錦関と照ノ富士関が途中で出場しましたが、結果としては宮城野部屋所属の第69代横綱白鵬関と田子ノ浦部屋所属の第72代横綱稀勢の里関の両横綱が怪我の影響などで初日から金星を多く配給したのちに途中休場や、春日野部屋所属の栃煌山関や阿武松部屋所属の阿武咲関が場所の後半で休場するなどし、幕内では6人も休場してしまいました。ちなみに、初日から休場した貴乃花部屋所属の貴ノ岩関や木瀬部屋所属の宇良関など、十両力士を含めると11人の関取が休場したことになります。次の春場所が少しでも、この傾向が改善されることを期待したく思います。

ところで、初場所の見どころとされていたのは、幕内上位では、貴乃花部屋所属の貴景勝関と阿武松部屋所属の阿武咲関の平成8年生まれの両小結を中心とする若手力士の活躍でした。結果としては、先述した栃ノ心関や湊部屋所属の逸ノ城関といった、過去にこの地位で実力を発揮した力士が復調したことなどによって、幕内上位の壁に跳ね返される形で大きく負け越してしまうものとなってしまいました。先述した両小結は共に序盤から星があまり伸びず、共に実質10敗以上の成績で終わりました。阿武咲関は場所中に右膝の靭帯を痛めるなどして途中休場してしまい、残念ながら春場所も、この怪我の影響などから場所を全休することが決まってしまいました。

この他に、東前頭筆頭で新三役を狙っていた八角部屋所属の北勝富士関も同程度の成績になり、勝ち越したものの、出羽の海部屋所属の御嶽海関は序盤に7連勝して大関への期待が高まったものの、大関戦など実力が上の力士との取り組みが組まれた中盤以降に失速してしまう結果となってしまいました。

従って、幕内の土俵では、かつての実力者が再び存在感を示した15日間になったといえると思います。

十両の土俵の傾向は二極化が顕著になった

十両の土俵では関脇など三役の番付に1年ほど定着するなどの実力を持っている境川部屋所属の妙義龍関が10勝5敗の成績で木瀬部屋所属の英乃海関との優勝決定戦の末に勝利して優勝しました。
十両全体の傾向としては、上位の番付では勝ち越した力士が多いものの、2桁の星を挙げて大勝ちをした力士は限られた傾向となりました。下位の番付では、新十両の力士において錦戸部屋所属の水戸龍関が勝ち越した反面、立浪部屋所属の天空海関が4勝11敗で負け越すなど、勝ち越す力士と2桁の黒星で負け越したり、途中休場したりする力士にはっきりと分かれる傾向になりました。

初場所も楽しみな若手力士が出現した場所となった

また、初場所も楽しみな若手力士が現れた場所になりました。具体的に幕内の土俵では錣山部屋所属の阿炎関と高田川部屋所属の竜電関の新入幕力士2人が共に10勝5敗の好成績を残して敢闘賞を獲得したり、学生相撲で凌ぎを削ってきた高砂部屋所属の朝乃山関と時津風部屋所属の豊山関が共に勝ち越したりするなど、楽しみな若手力士が好成績を残して春場所に繋げることができました。

また、入門し立ての力士や長い間休場するなどして番付外になった力士が取る前相撲において、大嶽部屋に入門し、昭和の大横綱の1人とされている第48代横綱大鵬関の孫である納谷や立浪部屋に入門し、高砂部屋所属だった第68代横綱朝青龍関の甥である豊昇龍など、既に実力を持った若手力士が注目を浴びたことも同じです。ちなみに納谷は東序ノ口18枚目、豊昇龍は西序ノ口19枚目に名前が載って春場所を迎えることになります。序ノ口の土俵で、この2人を中心に、どれだけ活躍を示して関取として土俵を盛り上げてくれるかなど、期待が持てる若手力士が誕生した場所になったといえると思います。

まとめ

このように、異例の状況下で開催された初場所は、かつての実力者が台頭して活躍した結果、その中から優勝者が現れる結果となりました。

その一方で、上位では壁に跳ね返されてしまった力士が多かった反面、新入幕力士や角界の門を叩いた有望株とされている力士が活躍や注目を浴びるなどして今後が期待される若手力士も現れた場所となったといえると思います。

この次の春場所では、どのような展開と取組内容になるのかという興味が持てるかもしれません。