30歳代独身男性の春場所体験記2018

相撲 2018年 03 月号 [別冊付録:春場所本物新番付] | 「相撲」 編集部 |本 | 通販 | Amazon

今年も春場所を生で観戦する季節が訪れ、私も金曜日にあたる6日目に観戦しました。

昨年は、田子の浦部屋所属の第72代横綱稀勢の里関が、当時大関だった伊勢ヶ濱部屋所属の照ノ富士関を下して、感動の逆転優勝で幕を閉じた春場所だったことは記憶に新しい方もいらっしゃるのではないでしょうか。それから1年が過ぎ、今年は稀勢の里関は全休し、照ノ富士関は十両に陥落していまい、状況はガラリと変わってしまいました。今年もチケットの獲得には苦戦を強いたり、連日の満員御礼が続いたりするなど相撲人気は健在ですが、午前10時台にはまだ当日券が残っているなど、去年よりはフィーバー的な雰囲気が少し減ったと感じられました。

そこで、この6日目に観戦した様子などを記述したいと思います。具体的には、まず私が行った観戦スタイルから紹介し、生観戦を通して感じたことと新たに気になった力士や以前から気にしていた行司を取り上げます。その後に、昨年の観戦と変わった点や類似した点を纏めた流れとなっております。さらに初めて生で観戦した丁度10年前のことも少し記述しております。

ただし、あくまでも個人的な観戦スタイルに基づいた内容になっており、30歳代独身男性がイス席で団体に囲まれながら1人で観戦したという状況で書かれていることを前提にしていただければ幸いです。

相撲内容を重視した観戦スタイルを楽しむために

大相撲を観戦するスタイルは人それぞれではないかと思います。例えば、ビールと枝豆などのおつまみを食べながら観戦するケースもあれば、行司や呼出しなどの裏方と呼ばれる声を聴いたり、力士が塩をまき、力水という柄杓に組んだ水で口をゆすぐという所作を見たりして日本らしさの雰囲気を味わいながら観戦するケースもあります。勿論、土俵上で繰り広げられる相撲展開や内容といった中身を楽しむ観戦スタイルもあり、今年は、この観戦スタイルを中心に観戦しました。

確かに、この方法だと本場所期間中の夕方に普段テレビやラジオなどで放送されているのを見ているのとそれほど変わらないと考えている人もいるかもしれません。しかし、テレビの場合、土俵を映しているカメラは正面の1階席付近にあることが多く、解説やゲストなどの音声付きでの観戦スタイルとなります。本場所に足を運んだ場合、正面升席のかなり前方の席での観戦の場合は別ですが、普段の角度や高さ以外からの観戦を楽しむことができます。また、音声が付かないので、立ち合いの際に力士同士がぶつかる音や観客の声などがよりリアルに味わうことができるメリットもあります。さらに今年の場合、パラリンピックなどのスポーツ中継の影響でテレビ中継の時間が少なくなっており、午前中など普段テレビなどで見ることができない時間帯の取り組みも見ることができるメリットを多く得られていることも、このような観戦スタイルで楽しんだことに繋がったと思います。

生観戦で、より相撲内容に集中して楽しむために今年は特に余計なモノを極力減らすことを心がけました。例えば事前に持っていく物としてお金やチケットといった必要最小限にとどめ、観戦に使うメモなどの紙類に関して昨年まではA6のメモ紙サイズ等の小さいサイズを複数枚にしていたのをA4などの大きいサイズ両面1枚にすることで持ち物を減らすことができました。さらに当日も昼食で出たゴミ類を、中入りの休憩や勝負審判が交代するタイミングで適宜捨てていくなどすることにより、周囲に余計なモノがない状態をキープすることができ、目の前にある土俵に神経を集中することに繋がったのではないかと思います。さらに、同じタイミングでトイレ休憩などを済ませる工夫もすれば1番でも多く相撲内容を見ることができました。

10年間で贔屓力士に注目した観戦から内容重視の観戦に変わった

このように、今年は相撲内容に集中して楽しむ方法で春場所を生で観戦しましたが、初めて生で観戦したのは丁度10年前の20歳の時でした。この場所にあたる平成20年春場所は、高砂部屋所属の第68代横綱朝青龍関が、宮城野部屋所属の第69代横綱白鵬関との2敗同士の相星決戦に勝って22回目の幕内最高優勝を果たした場所でした。

当時は相撲ファンになって5年目に入った頃で、立ち合い前のパフォーマンスで有名になった東関部屋所属で現振分親方の高見盛関と年齢が一番近い力士として春日野部屋所属の栃煌山関を特に気にして相撲観戦していました。ちなみに十両では春日野部屋所属で現岩友親方の木村山関が123敗の成績で優勝を決めた場所でしたが、この木村山関も故郷が同じという理由などからファンだったので、全体的に満足して相撲を楽しめたことは今でも覚えています。

結果として、20歳代の全てを相撲ファンとして過ごしたことになりますが、先場所までの10年間は大相撲に対して、土俵で繰り広げられている内容や展開よりも、稀勢の里関など贔屓にしている力士の勝ち負けや番付及び地位の変化を重視した見方で楽しんでいました。このため、相撲を公平な眼で見ておらず、生観戦のケースを中心に贔屓にしている力士が関わる取り組みで通行人が目の前を通るなどして見られなかった場合に気分を害したこともありました。

しかし今場所は、取組の中で体格的に不利な力士が1分近く耐える様子に感動したり、春日野部屋所属の栃ノ心関の右四つ左上手といった十八番がある力士に対して、取組の中で十八番の形を作っていく過程を楽しんだりするなど、土俵の内容や展開を重視した見方で楽しめるようになりました。これは恐らく、30歳代に入ったことで年下の力士が多くなり、力士たちの気持ちを少し察して同情することが増えたり、たくさんの取組を見て十八番の形を正確に把握することが少しできたりしたことが考えられます。

このように、今場所を生で観戦して、単純な理由から贔屓力士を作って相撲を楽しむ方法から、贔屓関係なく土俵の内容や展開に注目して楽しむ方法に変わったと実感できました。

生観戦を通じて気になった力士と行司紹介

このように相撲内容や展開を重視することで新たに気になる力士を見つけやすくなるというメリットもあると思います。今回の生観戦では幕下以下の取的での取り組みで、元北桜関が師匠を務めている式秀部屋所属の爆羅騎、元巌雄関が師匠を務めている山響部屋所属の彩の湖、元小結大豊関が師匠を務めている荒汐部屋所属の若元春、元小城ノ花関が師匠を務めている出羽海部屋所属の松山の計4人に対して興味を持ちました。彼らは、いずれも体重が130kg未満のソップ型と呼ばれる体格でアンコ型と呼ばれている大型力士に対して粘る様子に興味を持ったと考えられます。

また、複数年相撲を観戦することで、行司などの裏方さんも昇格していくケースが多いため、以前から注目していた行司が後の取組に出場するなどの状況を通じて遷移を楽しむこともできます。その例として、現在十両格行司の1人である式守慎之助を紹介したいと思います。式守慎之助は元大関若嶋津関が師匠を務めている二所ノ関部屋に現在所属しており、5代目となっています。以前から注目した理由として土俵上で発せられる「ハッキヨイ!」や「のこった!」などのリズムが八百屋さんのような感じがして独自性があるからと考えられます。初めて生で観戦した時に、この特徴的な行司さんを面白いと感じるようになりました。当時はまだ幕下の取組の時に出場しており、この行司さんが登場した時に、「もう十両土俵入りの時間帯なのか」など、土俵進行の目安にした頃もありました。現在は十両前半の取組を中心に出場するようになっており、10年の年月を感じさせるものとなりました。ちなみに行司の名前は一人前とみなされる十両格より上では先代から受け継がれている名前を使うケースが多くなっており、式守慎之助の場合、十両格に上がった平成26年初場所までは木村玉三郎や木村玉男という名前で土俵に立っていました。

昨年と今年の生観戦における相違点とは

ここで、記憶に新しい昨年の生観戦と今年との違いについて纏めていきたいと思います。今年も去年同様に雨が降る中での観戦となりました。冒頭でも取り上げましたが、今年もチケットの入手に苦戦を強いられ満員御礼が出る盛況ぶりでした。ただ、去年のように当日券が数分で完売になるような状況ではありませんでした。座席は同じ正面2列でしたが、去年が真正面だったのに対して、今年はやや東寄りになりました。それでも、相撲を見る角度はそれほど変わった感じはしませんでした。

昨年ほどの盛況ぶりではなかったのにも関わらず、自分の周囲の座席がグループなどで昼食時にあたる11時半ごろには完全に埋まってしまい、この時間帯にもピークがあったことを予測できずに混乱してしまった点は誤算でした。座席が埋まるタイミングは状況によってバラバラですが、このピークを把握すべきだったと今では少し後悔しています。ちなみに昨年は幕下の取組が行われる13時台が、席が埋まっていくピークで、そのタイミングで満席になっていました。

先述した通り、今年は土俵上の1番を多く見ることに専念した観戦スタイルで春場所を観戦してきましたが、昼食後に館内見学も少し行い、ちゃんこスープの試飲コーナーが今年もありました。内容は元関脇旭天鵬関が師匠を務めている友綱部屋の塩味と醤油味でした。私自身は鶏ガラベースであっさりとした味が特徴的の塩味のスープが特に美味しいと感じられました。ちなみに去年は元大関霧島関が師匠を務める陸奥部屋のちゃんこでした。また、正面玄関付近の混雑度は時間帯が違っていたので単純比較はできませんが、去年ほどではなかったと思います。

まとめ

このように、今年の春場所は自分の周囲や持ち物で、ゴミなど余計なものを減らしていったことで集中して相撲内容を堪能することができた場所となったと思います。ただ、昼食時に第1の混雑ピークを予測できなかったことにより、ご飯を食べている際に混乱してしまったという誤算もありました。

平成最後の場所となると考えられる来年の春場所は、これらの経験に基づいて相撲内容や展開をじっくりと多く、生で楽しみたいと思います。