本当に「オネエ」は身近になった?

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メディアで身近になった「オネエ」はとても複雑で多様

マツコ・デラックスさんが週の大半テレビで拝見できるように、とても身近になった「オネエ」。そんな「オネエ」の方たちが実はとても複雑かつ多様であることをお伝えしました。それでは「オネエ」は本当に私たちにとって身近になったのでしょうか?

「オネエ」≠セクシュアルマイノリティ

「オネエ」のような人々の大部分を「セクシュアルマイノリティ(性的少数者)」と呼びます。最近、渋谷区や世田谷区で同性パートナーシップ制度が導入・検討されるなどしているので、耳にした人は少なくないのではないでしょうか。大部分、としたのは、「オネエ」の中に生まれも男性で、男性として生きていて女性が好きな異性愛者(ストレート)の男性がいるからです。

例えば「尾木ママ」さんは、男性として生まれ男性として女性と結婚している異性愛男性です。セクシュアルマイノリティの中にもいわゆる「オネエ」系ゲイで奥さんと子どもという家庭を持つハムナプトラ田中さんなどもいらっしゃいますし、自分がゲイやトランスジェンダーだと気づく前に結婚、子どもを持つ人もいるので、結婚して子どもがいるから異性愛男性だとは言い切れないところも、複雑かつ多様なところです。

また、日本のメディアでは「オネエ」はカルーセル真紀さんや日出郎さん、おすぎとピーコさんなど、ずいぶん昔から慣れ親しんでいますが、レズビアンや「オナベ」といわれる人がテレビに出ることはかなり少ないですよね。「オネエ」以外にも、女性同性愛者や女性に生れてきたけれど性別に違和感がある人、バイセクシュアルの人など様々な人がいるので、セクシュアルマイノリティを「オネエ」と一緒に語るのは難題です。

日本の「オネエ」は何どれくらいいるの?

電通総研の調査では、日本の人口におけるLGBT(※1)の割合は最新のデータでは7.6%(2015年4月調査、2012年調査では5.2%)とされています。つまり13人に1人がLGBTだと考えられます。

レズビアンや女性に生まれたトランスジェンダーの方も含まれるので、日本の中で「オネエ」(男性のセクシュアルマイノリティ)が何人いるか、と言われれば少し難しい問題です。

ただし、学校1クラスが30人~40人、人が一生で出会う人の数などを考えれば、決してセクシュアルマイノリティに出会ったことがないと言い切れる人はいないのかもしれません。

あなたの知り合いに「オネエ」はいますか?

さて、ここでシンプルな質問です。

――あなたの知り合いに「オネエ」はいますか?

こう問われて「いる」と答える人は少ないのではないでしょうか。反対にいうと、「オネエ」つまり「ゲイ」や「トランスジェンダー」「性同一性障害者」はテレビの中や海外のお話だと思っていませんか?

確かにテレビではほぼ毎日「オネエ」を見られます。そして、海外ではエルトンジョンやリッキーマーティンなど名だたる著名人がゲイだと公言(カミングアウト)しています。しかも、同性のパートナーと子どもを育てている人もいますよね。タレントだけでなくゲイの政治家もいますし、同性同士の「結婚」ができる国も増えていることを聞いたことがある人も多いかもしれません。

本当に「オネエ」は身近になった?

電通総研が異性愛者の男女にアンケートを行ったところ、「LGBTに該当する知人・友人の有無」は10.3%とのデータが出ました。この数は妥当だと思いますか?それとも少ないと思いますか?

「自分のセクシュアリティ(※2)を隠さずに話してほしい」異性愛者の男女は5割を超えます。そして「(LGBT当事者に対する)世の中の理解がもっとあっていいと思う」人は7割を超えます。けれども一方でこのような調査結果もあります。「LGBT当事者だった場合抵抗を感じる人物」は「芸能人・著名人・有名人」は抵抗を感じる人は13%、「職場の同僚」や「知人」は25%強、「友人」は37.6%、「兄弟姉妹」は67.3%、「親」「配偶者」「恋人」「子ども」になると、抵抗を感じると答える人は80%を超えます。

お気づきでしょうか。自分に近い人物になるにつれ「オネエ」だと抵抗を感じる人が増えているのです。

つまり、メディアや関係の遠い「オネエ」は受け入れられつつありますが、私たちの隣にいるかもしれない「オネエ」は抵抗を感じ、受け入れられていない状況にあるのです。

(※1 LGBTとはレズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダーの頭文字をつなげたものです。セクシュアルマイノリティ(性的少数者)はたくさんの種類の属性の人がいますが、しばしばセクシュアルマイノリティを語られるときに、「LGBT」が用いられることも多いです。)

(※2 セクシュアリティとは、その人の性のあり方のことです。異性愛であること、同性愛であること、男に生まれてきたか、女に生まれてきたか、生まれてきた性に違和感を持っていること、持っていないことなど自分の性のことです。)

参考・引用
電通総研2012年LGBT調査
加藤秀一ほか著『図解雑学ジェンダー』ナツメ社,2005.